真夏の決意
「翔一くーん。ほら見て、小さいカニ!可愛いでしょ?」
「え?あ…ああ、そうだな。」
「もう、ちゃんと見ててよー。」
よく晴れた休日の昼下がり
俺と恋人であるなまえはDencity内にある海へとやってきた
波打ち際で無邪気に遊んでいたなまえは鈍い反応をしかしなかった俺に対し、仁王立ちしながら此方を指差す
そりゃ俺だってカニなんかはどうでもいいが、ちゃんとなまえを見てたいさ……如何にもなまえを狙ってる野郎共がいなかったらな!
猛暑が続いたある日、突然なまえは暑いから海へ行きたい!遊びたい!と言い出した
暑い中、更に暑くなりそうな海へ出掛けるのもどうかと思ったがホットドッグの売上も見込めそうだし
何より、なまえの水着姿も拝めるかと考えて海行きを了承したのだ
「…でも、安易だったなあ。」
勿論、行きたいと言い出したなまえは楽しそうに海を満喫している
しかし俺はというと、正直気が気でない
何故かと言えばなまえは大学のミスコンだか何だかに選ばれた事もある容姿の持ち主だった為、彼女を眺めてくる輩が多すぎる為だ(まあ俺が睨んでいるから一応声は掛けてこないようだが)
多分俺が一瞬でも目を離したらなまえはあっという間に男共に囲まれちまうんだろうな…
「なまえ、やっぱ帰ろう。」
「えー、何で?まだ海に来て1時間も経ってないよ?」
そう言って彼女の手を引き海原を後にしようとしたものの海を満喫していたなまえからすれば俺の心中等、全く知る由もないのだろう
不満そうに頬を膨らませている
「ねえ翔一くん、何で?もっと海で遊びたいー。」
「まあ落ち着けって、なまえ。なまえが好きなあの店の夏期限定パンケーキ、奢るからさ。」
「ホント!?」
するとさっきまでの不機嫌顔は何処へやら
キラキラした瞳を向けながら嬉しそうに笑うなまえの姿がそこにはあった
「…ホント、そういう所も含めて可愛いんだけどなあ。」
でも金輪際、なまえを海に連れていくのは止めておこう
勿論、プールも含めてだ
真夏の決意
―――――
海とかもう何年も行ってませんが。