素直になれないのは貴方の所為


「よっ、なまえ。作業は進んでるか?」


広場の中央から少し離れたベンチで作業をしていた所、私に声を掛けてきた男がいた

声の主が誰かもうわかっている私は眉間に皺を寄せつつ、顔を上げる



「…翔一。」

「そんなに嫌そうな顔すんなよ。…で、作業の進み具合は?」

「残念ながら従兄弟の翔一さんが邪魔してくるから進みません。大体、私にもやる事があるんだから進み具合がよくない事は知ってるでしょ。」



わざとらしく丁寧語を使い皮肉混じりの言葉を告げた後、再度作業を始める私の傍らで彼は苦笑しながら隣に腰掛ける

店はいいのか、店は



「やる事なあ……LINKVRAINSの中、青年姿のアバターで強いデュエリストやハノイの騎士と戦う事がそれか?」

「悪い?」



『女だから』、『女のくせに』

学校や仕事、デュエルでも上記の言葉はごまんと言われてきた


正直ハノイの騎士なんてどうでもいいが、LINKVRAINSで強ければ難癖を付けられる事はない

女ではなく男の姿ならば尚更だ


きっと翔一にはこんな思い、一生わからないんだろう



「あ、いや別に悪くはないんだが男の姿じゃなくたっていいだろ。なまえは可愛いんだし、そのままのアバターだって問題なさそうだ。」

「は、はあ!?だ…だ、誰が可愛いってのよ!」

「なまえが。そういう反応、可愛いと思うぞ。」


そう言って満面の笑みを浮かべると、私の頭をぽんぽんと軽く叩く翔一



「…翔一のそういう何でも見透かしたような余裕綽々な所、ムカつく。」

「ん?何か言ったか?」

「べ、別に何でもない!」



結局の所私の気持ちや考え等、翔一には全部筒抜けで

そんな翔一に勝てる気がしなくて、私はいつまでも彼の前では素直になれないのだ


素直になれないのは貴方の所為

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素直じゃない子はなかなか書くのが難しいです。
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