お兄ちゃんは度が過ぎる過保護4
「ほらなまえ。この少年が尊、穂村尊だ。前に会ってみたいって言ってただろ?」
「初めまして!藤木遊作の妹、藤木なまえです!」
ある日の放課後、遊作と草薙さんの所へ寄った僕は彼の妹と名乗る女の子を草薙さんに紹介された
自分をなまえと名乗ったその子はとても元気一杯な明るい印象の女の子で一見すれば遊作とあまり似てないような感じがしたけど、髪の色や意志の強そうな瞳は彼にそっくりだった
「えっと…なまえちゃん、だよね。なまえちゃんはデュエルをするの?」
「勿論!穂村さんもデュエル、するんですよね?久しぶりにお兄ちゃん以外の人とデュエルが出来ると思ったら私、もう嬉しくって!」
キラキラと輝くような笑顔を僕に向けるなまえちゃんが可愛いなと思った瞬間、急に全身が悪寒に包まれる
何だろう…戦場で熟練の殺し屋からターゲットにされたような、このとんでもない殺気は
「あっ、あー……そうだ!尊に渡すものがあったんだ。なまえ、ちょっと遊作と待っててくれ!」
「え?く、草薙さん!?」
そう言うなり草薙さんは半ば引きずりながら僕を車の後ろへ連れていく
そして何が何だかわからない僕を尻目に、草薙さんはようやく口を開いた
「悪いな、尊。急に離脱しちまって。」
「いや、僕は構いませんけど…どうしたんですか?」
「…お前、ほんの少し前に異常な殺気を感じただろ。」
「えっと……はい。」
僕が頷くのと同時に草薙さんは大きな溜め息を吐き、次いで僕の両肩をがっしりと掴む
「いいか、尊。……なまえと親しくなりたかったらまず、遊作への好感度を上げるんだ。」
「ど、どういう事ですか?親しくって…僕、さっきは世間話位しかしてませんよ?」
なまえちゃんと親しくなりたかったら遊作への好感度を上げろとか、さっぱり意味がわからない
理由がわからず首を傾げる僕に対し草薙さんは真剣な表情を浮かべ、再び口を開く
「……遊作はなまえの事を溺愛してて、物凄く過保護なんだ。」
「ああ……。」
その言葉を聞いて僕は一瞬で理解した
先程僕に向けられた痛い程の殺気の出所は兄である遊作からで
彼女へ不必要に近付くなといった脅しのような警告だったのだ
「草薙さんは大丈夫なんですか?」
「まあ、普通の会話位ならな。間違ってなまえに色恋沙汰の話題を振ってみろ、背中にライフル銃を突き付けられてるような物凄い殺気と射るような視線を向けられるぞ。」
「…肝に銘じておきます。」
まさか彼にこんな一面があったなんて
そっと車の影から覗いた僕の目に映る遊作の眼光はいつも以上に鋭くて
今行ったら絶対殺られると思った僕と草薙さんは彼の殺気が収まるまで暫く車の後ろに隠れていたのだった
お兄ちゃんは度が過ぎる過保護4
―――――
こんなお兄ちゃんは嫌だ。(4度目)