君は僕の女神様
「穂村くん、大丈夫?」
「だ…大丈夫、大丈夫。ごめんねみょうじさん、心配掛けて。」
日差しの強い、日曜日の遊園地
沢山の家族連れやカップル達が行き交う中、僕とみょうじさんは木陰のベンチに腰掛けて休憩していた
休憩と言っても決して疲れから休んでいる訳じゃない
…いや、むしろその方がまだマシだったかもしれない
「ごめんね。穂村くんがお化け屋敷を苦手だって知ってたら私、中に入りたいなんて言わなかったのに…。」
「い、いやみょうじさんの所為じゃないよ!僕が伝えなかったのが悪かったんだから、気にしないで!」
そう、此処で休憩している理由はただ一つ
幽霊やお化けといったホラー系が苦手な僕が無理をしてみょうじさんとお化け屋敷に入った結果大量の冷や汗をかいて出てくる事となり、心配した彼女に休憩を促され現在に至る…といった結果だった
此処に不霊夢がいたら素直に苦手だと伝えればいいだろうと言われそうだけど、僕だって男だ
転校して直ぐに一目惚れし、会話や逢瀬を重ねてようやく恋人同士になれたみょうじさんの前でカッコ悪い所は見せたくなくてつい無理をしてしまった
…まあ、結局こうしてカッコ悪い姿を見せてしまう事になってしまったんだけど
もしかしたら幻滅されてしまったかもしれない
そう考えて大きな溜め息を吐いてしまった所、隣から小さな笑い声が聞こえてきた
「みょうじ、さん?」
「あ、ごめんね笑っちゃって。何だか穂村くんが可愛いなって思って。」
…その言葉を紡ぐみょうじさんの方が可愛いんだけどなあ
「う……でも、さっきのは流石にカッコ悪かったよね。」
「そんな事ないよ。だってお化け屋敷の中で穂村くん、ずっと私の手を握ってくれたでしょう?」
「え、えっと…それは……」
怖さを紛らわせる為に思わず勝手に握っちゃってた訳だけど、彼女はその事に対して怒ってないんだろうか
「私ね、初めて穂村くんと手を繋げて嬉しかったんだ。」
「みょうじさん…。」
僕に向かって優しく微笑むみょうじさんが凄く眩しく見える
まるで女神様のようだ
「ねえ穂村くん、観覧車は平気?」
「あ……う、うん平気。」
「じゃあ、もう少し休んだら次は観覧車に乗ってもいい?」
小首を傾げながら尋ねてくるみょうじさんがとても可愛らしくて
僕は先程のお化け屋敷の怖さ等すっかり忘れ、大きく頷いた
君は僕の女神様
―――――
お化けが苦手とか可愛いんですけど。