虚構の世界での再会
『あっ、おはようございます。リボルバーさん。今日も元気そうで何よりです。』
「…なまえ。」
電脳空間にて古ぼけた旧式のデュエルディスクから音声が発せられると同時に、人を模したAIの姿が現れる
なまえと仮の名を与えたこのAIは5年前、私がサイバース世界に侵攻した際見つけたイグニスの亜種とでもいうべき存在だった
だが捕らえたこのAIはサイバース世界の場所はおろか、自らがAIである事もまるで理解していないような素振りを見せる
無駄な時間を費やしてしまったとこのAIを消去しようと何度も試みたものの、どうしても消去する事は出来なかった
『最近のリボルバーさんはずっと電脳空間内にいらっしゃいますね。お疲れじゃないですか?』
「疲れてなどいない。余計な事を言うな。」
『疲れた時には甘いものがオススメですよ。チョコレートは如何ですか?』
「…っ、」
《 、疲れた時には甘いものがいいんだよ。はい、チョコレート。》
「……なまえ。」
かつて私が想いを寄せ、7年前に他界してしまった少女、なまえ
このAIは何の因果かそのなまえに姿も性格も瓜二つだった為、その度に彼女の事を思い出してしまい消す事が出来なかったのだ
「…もういい、貴様はこれ以上喋るな。」
『うーん…少し寂しい気もしますけど、リボルバーさんがそう望むなら。また明日、お話ししましょうね。約束です。』
私にそう告げるとなまえは名残惜しそうにデュエルディスクへと戻り、電脳空間内に静けさが漂う
「ネットの世界等、全てが虚構だと…私自身が最も理解していると思っていたのだがな。」
虚構の世界、ましてや人でない人工知能だと頭では理解している
それでももう一度、なまえに会えたのかもしれない
古ぼけたデュエルディスクを手に取りながら私は一人、小さく呟いた
虚構の世界での再会
―――――
割とどうでもいい追記ですが、この旧式ディスクは生前のなまえが使用していた物です。