騒々しい昼食時間
とある月曜日の昼時
昼休憩のチャイムが校内に鳴り響くと生徒達は皆、各々の昼食を楽しみ始める
その教室内から俺は一人、屋上で昼食を取ろうと扉を開けたのだが…
「藤木くん、一緒にお昼食べよう!」
扉を開けた瞬間、見た事のある女子生徒が俺の前へ立ちはだかるかのように笑顔で立っていた
その手には弁当が入っているであろう、小さな手提げ袋を携えて
「…またお前か、みょうじ。」
この女子生徒は隣のクラスのみょうじという人物で
10日程前に彼女が足を踏み外して階段から落ちそうだった所を偶然助けた際に何故か懐かれてしまい、こうして毎回昼食に誘われているという珍事に巻き込まれているのだ
「断る。」
「ええー、そんな事言わずにさあ。一緒に食べようよー。」
こうしてはっきりと否定の意思表示をしている筈なのに、まるで聞いていなかったかのように俺の後をついてくるみょうじ
こうして毎回屋上までついてくる為、結局共に昼食時間を過ごす羽目になっていた
「…でね。ウチのクラスの男子が授業中に動画を見てたら先生に見つかっちゃって、それで…」
昼食の弁当をつつきながらみょうじは自分のクラスであった事や友人の事、自分の好きなもの等を毎回飽きもせず話している
此方がうんともすんとも言わないのにおしゃべりなヤツだ
「みょうじ。」
「うん?」
「どうして俺に構う。」
そもそもみょうじは俺と違い、友人が多そうなタイプに見える
昼食を取る為だけにわざわざ俺の後をついてくる理由が全くわからなかった
「んーとね。前に藤木くん、階段から落ちそうになった私の事を助けてくれたでしょ?」
それは偶然あの時、あの場所を通り掛かっただけだ
別にそれ以上でも、それ以下でもないと前に言った筈だったが
「何だかあれから藤木くんの事が気になっちゃって。だからまずは昼食にお誘いして、藤木くんと仲良くなろうかと!」
此方が理解出来ない答えを紡ぎつつ、みょうじは相変わらずニコニコとしながら弁当を食べ進めていく
どうやら理由を求めた事自体が無意味だったらしい
「あ、藤木くんもタコさんウインナー食べる?」
「遠慮する。」
相変わらずみょうじは何が嬉しいのかわからないものの、ずっと楽しげに話していて
今日も俺の昼食時間は騒々しく終わっていった
騒々しい昼食時間
―――――
続く予定です。