七夕の約束
「ふんふーん。」
初夏が過ぎ本格的な夏が始まろうとしていたある日、尊やPlaymakerの仲間であるなまえが店の前に笹を飾っているのが見える
一体何をしようとしているのか
『なまえ、これは何だ?』
「これはね、七夕用の笹。こういう短冊に願い事を書いて、この笹にくくりつけてお願いするんだよ。」
『ほう、七夕というのはそういう日なのか。』
「あっ、不霊夢も短冊書く?Aiも書いたしさ。」
『…アイツも書いたのか。』
折紙で作った色とりどりの飾りの中に皆が書いた短冊が見えた為、失礼して短冊の願いを覗かせてもらう
店の持ち主である彼は勿論弟の事を、尊は自分を育ててくれた祖父母の健康を願う事が書いている
Aiはサイバース世界の仲間を見つけると真面目に書いている…と思いきや、裏にはもっと自由が欲しい等と書いてあった
…まあ、アイツらしいとも言える願い事だ
Playmakerは一度断ったらしいのだがなまえにねだられ自分の為すべき事を為すと、如何にも彼らしい言葉が綴られていた
『これは…なまえの短冊か。』
そして最後に上の方へ飾られた赤い短冊に気付いた私は可愛らしい文字が書かれている事から直ぐになまえが書いたものだと理解し、拝見させてもらう
『何々……不霊夢がサイバース世界に帰っても、また遊びに来てくれますように…?』
……そういえば以前、なまえが私に尋ねてきた事があったな
不霊夢はサイバース世界が元通りになったら帰ってしまうのかと
その時私は何の気なしに頷いてしまったが確かにあの時、なまえは少しだけ残念そうな、寂しげな表情を浮かべていた
きっとその事もあり、短冊にこのような願い事を書いたのだろう
『なまえ、私も願い事を書きたいのだが。』
「うん、いいよ。ちょっと待ってね、今用意するから。」
そう言ってなまえが用意してくれたのは彼女が書いたものと同じ、赤い短冊
それにスラスラと願い事を記し、私はなまえに手渡した
「わっ、不霊夢って達筆!えーっと……此方の世界へ遊びに来た際、なまえが出迎えてくれる事を望む…?」
『私はなまえがいるこの世界を気に入っているからな。サイバース世界へ戻った後も、なまえが出迎えてくれるなら遊びに来たいと思ったのだ。』
いまいち理解しきれていないのか首を傾げるなまえに対し、私は彼女が書いた短冊を指差しながら言葉を紡ぐ
するとようやく意味を理解したらしいなまえは満面の笑みを浮かべ、人差し指を私に向かって差し出した
「そんなの、短冊に書かなくたって幾らでも叶えてあげる。…だから不霊夢も絶対遊びに来てよ、約束っ!」
『ああ、約束だ。』
そうして私となまえは小さな指切りを交わす
その頭上では、澄んだ夜空にそれは見事な天の川が掛かっていた
七夕の約束
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七夕ネタを一つ。