垣間見えた可愛い独占欲
「スペクター。」
「……。」
「ねえ、何か怒ってる?」
「…怒っていませんよ、なまえ。」
「いや、完璧に怒ってるよねそれ。」
ハノイの騎士の同僚であり恋人でもあるスペクターと3日ぶりにLINKVRAINSで会ったというのに、何故か彼は不機嫌そうな表情を浮かべたまま此方を見ようとしない
わかりやすい態度のスペクターをちょっと可愛いと思う反面私には彼が怒る理由が全くわからず、取り敢えず隣に腰掛けてみた
「スペクター。私、何かした?」
「……。」
「何かしたなら謝りたいけど、理由を言ってくれなきゃわかんないよ。」
言い訳をするにしても謝るにしても、とにかく彼が怒っている理由を知りたい
そう思って彼との距離をちょっと詰めた所、今日初めてスペクターがこっちを向いてくれた
「なまえ。…昨日、男とLINKVRAINSを散策していたでしょう。」
「昨日?……あー、あれかあ。」
昨日は遠くに住んでる従兄弟がDencityにやって来てて、LINKVRAINSに行った事がないって言うから簡単に案内してあげてたんだっけ
「男って言ったって従兄弟だよ?全然そういう対象じゃないし…」
「従兄弟だろうと何だろうと、なまえの隣に私以外の男がいたと思うと腸が煮えくり返るような想いなんです。」
スペクターはそれだけ告げるとまるで幼い子供のようにそっぽを向いてしまう
…普段はそれこそ紳士的に振る舞ってるのに、私の事になると急に子供っぽくなるんだよね
「ホントに可愛いなあ、スペクターは。」
「何ですかなまえ、私はまだ怒って…」
「心配しなくても、私の一番はスペクターだから。もう従兄弟ともLINKVRAINSに行かないよ。」
未だに不機嫌そうな表情のスペクターを宥めるように頭を撫でてあげると少しだけ表情が和らいだ気がする
「…嘘ではありませんね?」
「私がスペクターに嘘吐いた事ないでしょ?」
「確かに、そうでした。」
そしてようやく機嫌が直ったのか表情を綻ばせるスペクターを見て、子供っぽい所もあるんだよなあと改めて認識しつつ
そんな所も含めてやっぱり私はスペクターが好きなんだと自覚したのだった
垣間見えた可愛い独占欲
―――――
遊作で考えてたのにいつの間にかスペクターになってました。