自称保護者の観察


「不霊夢、今日も広場へ行くよ。」


学校とやらが終わり、私の相棒である尊は街の中心部である広場へと足を向けている

だが今日はいつもと違い、少し浮き足立っているようにも見える


『どうした尊、今日はやけに嬉しそうだが。』

「今日はDencityになまえが来ててさ、放課後に会う約束をしてるんだ。」

『おお、なまえか。久しぶりだな。』



昨日から何処となくそわそわしていたのはこれが原因だったのか



なまえという名の少女は尊と同じ港町に住んでいて、所謂尊の恋人と称する存在だ


詳しい馴れ初めは彼が恥ずかしがって話してはくれないが、病気を患っていた為に学校にもなかなか行けなかった彼女とロスト事件後に心に傷を負いあまり学校へ行かなかった尊

少しだけ似た者同士だった尊となまえが偶然出会ってからは程なくして互いに惹かれ合い、恋人になったとは尊から聞いた事があった


私はデュエルディスク越しにしか彼女に会った事はないが穏やかで心優しく、尊が惹かれるのも納得出来る愛らしい少女だったと記憶している



「…あっ、なまえ!」


私が過去の記憶を思い出していた中、早速尊は彼女を見つけたらしい

こっそり画面越しに外の景色を見やれば広場に設置された大きなパブリックビューイング用の画面近くに、真っ白な日傘を差したなまえの姿があった



「ごめんねなまえ、待たせちゃって。」

「ううん、大丈夫。私もさっき着いた所だったから。」



そして二人は近くにあったベンチへと腰掛け、どちらともなく近況を語り合う


尊は今の学校に転校し仲間のような、友人とも呼べるような存在が出来た事を

なまえは僅かながら患っている病気が回復傾向にあり、このままいけば早くて1年後位にはDencityに戻って来れるかもしれない事を話していた


…そう言えば元々彼女は病気療養の為に親戚がいるあの港町にいて、本来はDencityの生まれだと尊が言っていたな

彼女がこの街に戻って来れれば尊も喜ぶだろう

そう考えて彼に視線を向ければいつも以上に破願した表情を浮かべている


…相当嬉しいのだな、尊



「Dencityに戻って来れたら尊と一緒の学校、行ってみたいな。」

「いいね!絶対毎日が楽しくなるよ!」

「ふふっ、そうだといいな。」



なまえはそう言葉を紡ぎながら小さく笑い、尊の手に自身の手を重ね合わせる


突然の事に尊は一人慌てふためくものの、彼女は気にしてないように彼の肩へと寄りかかる

その状態に尊は真っ赤な顔をしながら石のように固まってしまった


……そこは抱きしめたりキスをしたりする流れだろう、尊



良く言って初心、悪く言ってヘタレな相棒の姿に私は人知れずデュエルディスクの中で大きな溜め息を吐いた


自称保護者の観察

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オチが思い付いたものといつの間にか変わってました。
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