私だけのヒーロー
よく晴れた日曜日の午後
私は恋人である尊とショッピングへ行く約束をしていた為、待ち合わせ場所の広場へと向かっていた
可愛い雑貨屋さんにも行きたいし、新しく買ったこの服も尊に気に入ってもらえるといいなあ
そんな事を考えながら足を進めていたのだが…
「ねえ君、凄く可愛いじゃん!」
「俺らと遊ぼうよ、丁度ヒマしてたんだよね。」
もうすぐ広場という所で全く面識の無い男達に絡まれてしまった
「えっと…すみません。私、これから人と待ち合わせてて……」
「そんなの気にしなくていいって!」
「絶対俺らといた方が楽しいしさ。」
いやいや、貴方達が気にしなくても私が気にするんです
というか、私の意見を完全に無視してませんか
「まあまあ、つべこべ言わずに行こうよ。」
「は?ちょ、ちょっと待っ…」
意思の疎通が全く出来ない二人に私が若干呆れているとその中の一人が強引に腕を掴んで引っ張っていこうとする
慌ててその手を振り払おうとした瞬間、別の誰かによって引っ張っていた人物と強制的に引き離された
引き離したのは待ち合わせていた張本人である尊で、その顔は今まで見た事ない位に怒っているようだった
「な、何だよお前!」
「…俺のなまえに手ぇ出してんじゃねえよ。」
…あれ?尊って自分の事『僕』って言ってなかったっけ?
私がいつもと違う尊の様子に首を傾げている中、尊に凄い勢いで睨まれた男達は蜘蛛の子を散らすように逃げていった
男達が完全に見えなくなったのを確認した後、尊は私の方へ向き直ると安心したように息を吐く
「約束の時間になってもなまえが来ないから心配になって探しに来たら、こんなトラブルに巻き込まれてたなんて…。本当、無事で良かった。」
「私もまさか全然知らない人に絡まれるなんて思ってなかったから、尊が来てくれて助かったよ。でも尊、凄いね。尊が睨んだだけであの人達、逃げてったし。」
「あー……あれは、その…なまえが知らない男に絡まれてると思ったら頭に血が上って、つい口調が荒くなっちゃってさ。…ごめん、怖かったよね。」
そう言って申し訳なさそうに眉を下げる尊の姿に対し、私は正面から勢いよく彼を抱きしめる
「ど、どうしたのなまえ?」
「怖いなんて思う訳ないじゃん!尊は尊、私を助けてくれたカッコいいヒーローだよ!」
「…ありがとう、なまえ。」
そう言って私達は互いに抱きしめ合う
その中で尊が私の服を褒めようとした矢先、私も今日の尊はカッコいいとの言葉が重なり合ってしまい
私達は顔を見合せ、小さく笑いあうのだった
私だけのヒーロー
―――――
彼女の為に怒った穂村が俺口調に戻ったら面白いかなと思いまして。