女の子に優しい転校生


「むー…困ったなあ。」



日が沈み始めた夕刻

公園近くの大きな樹木の下で雨宿りをしていた私は雨を降らし続ける大空を見上げ、小さく溜め息を吐く

一人だったらこの雨の中でも走って帰る気はあったのだが、生憎今は一人ではなくて


「にー、にー。」

「この子が風邪でも引いちゃったら困るし……うーん。」


ついさっき道端に捨てられていた子猫を保護し、親元から離れ一人暮らしをしてる自分のアパートに連れて帰ろうとしたのだが

途中で大粒の雨に降られてしまい雨宿りをする必要に迫られ今現在に至る、といった所だった


だが、いつまでも此処にいたって現状の打破には繋がらない

着ていた制服の上着で子猫を包み意を決して降りしきる雨の中を走り出した所、急に誰かに腕を掴まれ傘の中へと引き込まれる



「ちょ…え、なになに?」

「どうしたのみょうじさん。こんな雨の中、傘も差さずに。」


私の腕を掴んだのはつい最近転校してきた穂村くんで

彼は自分が差している傘の中に私を引き入れると、雨で濡れた私の髪をハンカチで拭いながら不思議そうに尋ねる



「えっと、道端にこの子が捨てられててさ。このままにしておけないからうちのアパートで飼おうと思った矢先、突然の大雨に降られまして。」

「それで自分が濡れるのも厭わずに雨の中を走ってたって事かな?」

「そういうこと。私が風邪を引く分は別にいいけど、この子が風邪を引いちゃったら命に関わるもん。」



私がそう告げると包んだ制服の中からひょっこりと子猫が顔を出し、子猫と私を交互に見つめた穂村くんは何故か困ったような笑みを浮かべる



「みょうじさんは優しいんだね。…でも、もしみょうじさんが風邪を引いたら心配する人もいると思うよ。」

「でも私、結構体丈夫だけど…」

「正直に言おうか。みょうじさんが風邪を引いたら僕が心配なんだ。」

「はあ。」

「だからね、せめて自宅までみょうじさんを送らせてもらいたいんだ。」



そう穂村くんから告げられれば私には特に断る理由も無かった為、彼の好意に甘えさせてもらう事にした

帰路に就く中で穂村くんは寒いだろうと自分の制服を貸してくれたと思ったら危ないからと車道側を歩いてくれたり、とにかく私を気遣ってくれる



「穂村くんって女子に優しいんだね。モテそうな訳だよ。」

「え?あ…いや、女子に優しい訳じゃなくて…」

「違うの?」

「そういう訳じゃないんだけど……まあ、今はそれでいいや。」

「?」



穂村くんが残念そうに溜め息を吐いていた理由はわからなかったけど、私はこの出来事が切っ掛けでちょっとだけ穂村くんが気に入ったのだった


女の子に優しい転校生

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遊作なら傘を貸すだろうけど、穂村なら家まで送りそうなイメージだったので。
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