俺の上司がアイツにだけ甘い件について
「ねえねえ、聞いて聞いてー。」
ある日のLINKVRAINS内にてPlaymaker狩りをしていた俺の元に呑気な声を上げながら一人の女が駆け寄ってくる
そいつは俺とほぼ同時期にハノイの騎士へ加入したなまえという名の女で
加入したのも何だか面白そうだからという天然…というか、考えなしのヤツだった
「ちょっとはお前も仕事をしろ、なまえ。お前が働かないから俺達の負担が…」
「見てほら、クラッキング・ドラゴン!リボルバー様に貰ったんだー。」
……は?
なんで何もしてないコイツがそんなものを貰ってんだ?
「リボルバー様にね、Playmakerに勝つ為に新しいカードが欲しいってお願いしたらくれたんだよ。」
「…なまえお前、マジで怖いものなしだな。」
…そういえばハノイに加入した時もリボルバー様に『アバターも着てる服も可愛くないから違うのにしたい』とか言ってたな
その瞬間『あ、コイツ消される』と思ったのにリボルバー様は何を思ったのか何故か許可を出してたっけか(それでなまえは一般的な構成員のクセに自前のアバターを使い、服も俺達とは違ったものを着てやがる)
「でもリボルバー様って結構優しいよ?スペクター様や三騎士の人達も良くしてくれるし。」
「いやいやいや冗談だろ。」
遠目から見てても威圧感がハンパなくて声を掛ける事すら出来る訳がない
ましてやリボルバー様達相手に頼み事をするなんて、自分から消して下さいと言ってるようなもんだろ
「…そうだ!折角だからスペクター様にも見せてこようっと。」
「ちょ、ちょっと待てなまえ。本当にそんな事をしてタダで済む訳が…」
「今度デュエルしようねー。」
俺の意見等何のその、なまえは手を振りながらスペクター様の元へと向かっていくと嬉々とした表情でクラッキング・ドラゴンを見せてるようで
それを見たスペクター様も心なしか楽しげに笑っているようにも見える
「…何でなまえにだけ甘いんだ?」
そんな事を口にすればアイツは『じゃあ聞いてみれば?』なんて言うだろうが、消される前提でそんな事聞ける訳ないだろ
楽しげに談笑するなまえとスペクター様を見て、俺は一瞬ハノイを脱退するかどうかを考えたのだった
俺の上司がアイツにだけ甘い件について
―――――
またこのモブハノイが出てくる事を願います。