想い合うが故の言葉足らず


「うーん…」


ある日の休日

幼馴染のなまえから買い物に付き合ってと連絡が来た為同行したものの、彼女はあるブティックの中でずっと行ったり来たりを繰り返している

もうかれこれ、1時間は同じ事をしてる気がするんだけど



「ちょっとなまえ、まだ決まらないの?」

「むー……待ってエマ、もう少しだけ悩ませて!」


そう言って鏡の前に立ち、2着の服を交互に合わせて比べるなまえ

片方は大人っぽく、もう片方は可愛らしい印象を与えるような服だ



「なまえならこっちの可愛らしい服の方がいいんじゃない?いつもこういう服、着てるじゃない。」


小柄で背も低く、私と正反対の容姿をしてる彼女に似合うのは普段と同じ服装だと思うのに

私がそう告げるとなまえは少々恥ずかしそうに俯きつつ、小さく口を開く



「…だって今度の日曜日、晃さんと出掛けるんだもん。晃さんの隣にいて恥ずかしくない女の人になりたいの。」



ああ、恋人である晃とのデート用の服を見繕ってたって訳ね

でもそれなら余計検討違いな気がするわ、なまえ



「ねえなまえ、晃は前にこんな事を言ってたわよ。『そのままのなまえが一番可愛い』って。」

「えっ…晃さんが?」

「その時はその言葉、そっくりそのままなまえに伝えなさいって言ったんだけどね。だから変に大人ぶる必要はないのよ、なまえにはなまえの良さがあるんだから。」

「エマ…」



私がそう告げるとなまえは晃の事を考えているのか、小さくはにかみながら可愛らしい印象の服を抱きしめる



「…決めた!私、この服にする!」

「そうね、きっとそれがいいわ。」


もう片方の服を元の位置に戻し、会計を済ませようとレジへと向かうなまえ



「……ありがと、エマ。」


そのすれ違い様、彼女は感謝の言葉を呟いていく


「…全く。お互いにちゃんと伝えあえばいいのに。」



でも…それも全てがお互いを想い合う為、か


嬉しそうに店員から服を受け取るなまえが何だかちょっとだけ羨ましく思えるのは気の所為かしら?

笑顔を浮かべながら戻ってくるなまえの頭を撫でる中、彼女は不思議そうに首を傾げるのだった


想い合うが故の言葉足らず

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エマさんの夢を書くとどうしてもお姉さん感が出ます。
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