変わってるは褒め言葉です


此処は多くの人が集まるDencity内の広場

その片隅にて私は地面に這いつくばりながら現在、大切な物を探している真っ最中だ


「もう、一体何処いったのよっ!…ずっと藤木先輩に貰ったボタン、大切にしてたのに。」



そう、探し物というのは学年が1つ上の藤木先輩から卒業式の日に貰った制服のボタンを加工して作ったキーホルダーの事で

憧れの先輩から貰えた(というか、緊張から盛大に言葉を噛みつつも何とか頂けたの方が正しい)大切なボタンをずっと傍に置いておきたくて、キーホルダーにして携帯に付けてたのだ


しかしずっと付けていた分劣化が早く、何処かに落としてしまったらしい

だからこうして今、現在進行形で必死に探している真っ最中なのだ



「うー、見つからないー…」

「探し物はこれか?」

「あっ、これこれ!ありがとうございま…」


這いつくばる私の前に差し出されるボタンの付いたキーホルダー

見つけてくれた親切な人にお礼を伝えようと顔を上げた所、私の動きはピタリと止まる


「ふ、ふふ藤木先輩!?」


そう、私の大切なキーホルダーを見つけてくれたのはあの憧れの藤木先輩だったのだ



「お前、卒業式の時の…」

「は、はい!私、先輩から制服のボタンを頂きました!」


まさか藤木先輩が私の事を覚えててくれたなんて…



「緊張からか盛大に言葉を噛みつつ、制服のボタンが欲しいと勢いよく頭を下げた拍子に胸ポケットに入ってたチョコレートやキャンディをぶちまけてた後輩だろう。」

「え、えーっと……そうです、ハイ。」



まあ、そうだよね!

インパクトありすぎな状況だった為に覚えていてくれて嬉しい反面、コレは相当恥ずかしい



「変わったヤツだと思って覚えてた。」

「あ、それはよく言われます。」

「…本当に変わってるな。」


藤木先輩は何故か呆れたような表情を見せているが、何か変な事でも言ったのだろうか

不思議に思って私が首を捻っていると先輩は私の手にキーホルダーを落とす



「みょうじ、大切な物ならもう落とさないようにしろ。」

「はいっ!……あれ?」


私、一度も先輩に名乗ってなかったのに今さっき名字を呼ばれたような…



「変わったヤツだから覚えてたと言っただろう、みょうじなまえ。」



それだけ告げると藤木先輩は直ぐに広場を後にしてしまった


広場に残った私はというと嬉しさのあまり喜びの声を上げながら舞い踊り

それを見ていた友達から『広場の中心で舞い踊るなまえ』と不名誉なあだ名で暫く呼ばれるのだった


変わってるは褒め言葉です

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私が学生の頃、憧れの人や先輩にボタンやネクタイ等を頂く人が多かったのを思い出したので。
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