大好きで、愛おしい貴方
休日で賑わうDencityのショッピングモール内
その一角で私と恋人の遊作くんは道行く人々を眺めながらベンチに腰掛けていた
「なまえ、大丈夫か?」
「…うん。……ごめんね、折角のデートだったのに迷惑掛けちゃって。」
「気にするな。」
そう言って遊作くんは咳の止まらない私の背中を優しくさすってくれる
私にとって彼のその優しさが嬉しくもあり、とても申し訳なくなってしまう
私と遊作くんは1年程前から付き合い始めていたのだが私は普通の人より体が弱く、ちょっとした事でも体調を崩してしまう事が多かった
その為二人で何処かへ出掛けようとしても当日に寝込んでしまったり、今のように体調を崩して休憩しなければいけなくなったり…彼には迷惑ばかり掛けていたのだ
こんな風に迷惑ばかり掛けてると本当に自分が情けなく思うと同時に、遊作くんは私と離れた方がいいんじゃないかとも考えてしまう
「なまえ。」
そんな事を考えていた矢先、彼に名前を呼ばれ俯いていた顔を上げる
「俺はなまえに迷惑を掛けられたなんて一度も思った事はない。」
「えっ…」
「なまえの傍にいられる、それだけで俺は十分だ。」
そう言葉を告げると遊作くんは私の肩にそっと触れ、自分の方へと引き寄せる
彼の表情はいつもと変わらずクールなままだったが声色がとても優しく、悲観的に考えていた私の心に沁みていく
「……っ…ありがと、遊作くん。」
「ああ。」
言葉は少ないながらも私の傍にいてくれて、私が一番欲しいと思った言葉をくれる遊作くん
そんな彼が大好きで、愛おしくて
私は泣きながら彼の胸に抱き付いた
大好きで、愛おしい貴方
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今しがた苦しい咳が止まらず、遊作に看病されたいと考えた末のお話。