春の訪れ


「いやあ、助かったよ遊作。ホントありがと。」

「毎回、俺を面倒な事に巻き込むな。」



背中におぶった俺の幼馴染であるなまえは悪びれた様子等更々なく、楽しそうに笑っている

何故こんな事になっているかというと、その原因はとても単純明快なもので



「だってしょうがないじゃん。子供が困ってたんだもん。」

「だからと言って、木に引っ掛かった風船を制服姿のまま登って取ったはいいが落下。その拍子に捻挫なんて…大怪我でなかったからいいものの、もう少し慎重さを持て。」



元々は子供が手放してしまった風船を偶然通り掛かったなまえが自分で取ろうとした事がそもそもの原因で、彼女はたった一人で木登りをしたらしい


そして風船は無事に取れたものの足を滑らせて落下

子供の手前、痛みを我慢して風船を渡したまでは良かったのだがやはり痛いものは痛いという事で俺に助けを求めてきたのだった



「大体、俺じゃなくて草薙さんに言えばいいだろう。従兄弟なんだから。」



つい最近知った事だが、なまえは草薙さんの従姉妹らしい

…とても草薙さんの親戚とは思えないが



勉強が苦手で考え知らずな上、おっちょこちょい

自分がこうと決めたら一直線でいつも明るく、困っている人間がいたら誰よりも先に手を伸ばすお人好しで…



「えー。だって翔くんを呼ぶ事より、遊作しか頭になかったんだもん。遊作、何だかんだ言っていつも助けてくれるしさ。」

「…たまたまだ。」



…そんななまえに惹かれたのはいつだっただろうか

もう随分と前の事だったような気がする



「遊作ってばいっつも私の事助けてくれるからヒーローみたいだよねえ。」

「ヒーローなんかじゃない。」

「まあまあ。そういう優しいのに素直じゃない所も含めて、私は好きだよー。」

「ああ。……っ!?」



…何かの聞き間違いか?

今、なまえが俺の事を好きだと言ったような気が



「だからー、私は遊作のそういう素直じゃない所も含めて好きなの。ずーっと前からね。」



そう言って俺の背にぴったりとくっつくなまえ


突如、何の前触れもなく告白してきた彼女と対し突然の事に何も言葉を返せずにいる俺

そんな俺達を、小さな桜の蕾だけが優しく見守っていた


春の訪れ

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春が近付いていますね。
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