彼女になら飼われたい
「Aiー。今日も持ってきてあげたよー。」
『おー、なまえ!待ってました!』
ある日の夕方、遊作達のハッカー仲間であるなまえが店を訪ねてきた
なまえのその手にノートパソコンが抱えられている事に気付いた俺は彼女が来た理由を直ぐに理解し、両手を上げて喜ぶ
「今日は前よりもちょっと少ないんだけど、それでも平気?」
『おうよ!なまえが持ってきてくれるんなら何でもいいしな。それじゃ、いただきまーす。』
そう言って俺はなまえのパソコン上に残っている映像データやプログラムデータを次々と食べていく
遊作が俺を捕まえてから暫く経ってなまえと出会ったんだが、どうやらなまえは俺の事を結構気に入ってくれたらしい
こうしてたまに自分で組んだプログラムデータや撮影データ等を『Aiのご飯』と称して持ってきてくれていたのだ
「しっかし、わざわざAiに食わせなくてもデータを消すなんて簡単な事だろ。コイツ自身もプログラムなんだし。」
「なまえ。コイツに気を使う必要なんてない。」
『お前ら冷たすぎ!』
遊作達の態度に憤慨してた俺を見たなまえは何処か楽しそうに笑い、そして俺の頭を優しく撫でる
「私が好きでやってる事だから別にいいの。ねえAi、私が作ったり撮影したデータはおいしかった?」
『うう…なまえだけが俺の癒しだぜ。勿論!いつもなまえが持ってきてくれるデータはどれもうまいぜ。』
「えへへ、ありがと。」
そう言って柔らかな微笑みを浮かべるなまえを見てると何だかこっちまでほっこりするような気持ちになれる
今までハノイのデータやSOLテクノロジーのデータなんかを食ってきたが、ハノイは超マズかったしSOLテクノロジーは腹は膨れたものの、味はイマイチだったんだよな
それに引き換え、なまえがいつも持ってきてくれるデータは何というか……人間で例えるなら有名パティシエが作った高級スイーツを食べてるような、そんな感じだった
「すっかりなまえに餌付けされて、まるでペットみたいだな。」
『何だとー!?』
「まあまあ、落ち着いてAi。…でもAiみたいに可愛い子だったら私、毎日可愛がっちゃうかも。」
『え、そう?』
ペットっていう扱いはどうかと一瞬思ったものの、なまえが飼い主だったらまあ悪くはないかもしれない
今現在大切な癒しになっている優しいなまえの笑顔を眺めつつ、俺は小さく頷くのだった
彼女になら飼われたい
―――――
Aiがペットだったら楽しそうです。うるさそうですけど。