許されない恋


「なまえ。」

「晃くん。もしかして晃くんも残業?」

「まあそんな所さ。」

「お互い、大変だね。」



今日は仕事の目処がつくまでと一人残って雑務をこなしていた所、同期のなまえと廊下でばったりと出会う


なまえとは別の部署だったものの、お互い一目惚れに近い形で好意を抱いている間柄だった

勿論、なまえに私の想いを告げた事もある


だが、彼女から返ってきた答えは謝罪の言葉だった




「…なまえ。私はやはり君の事が…」

「ダメだよ、晃くん。…だって、私には許嫁がいるんだもの。」



私の言葉を遮るように、何処か悲しげな顔で言葉を紡ぎ出すなまえ


古風で厳格的な家庭で育てられてきたなまえには未だ一度も会った事のない許嫁がいるらしく

彼女が次の誕生日を迎えた日には結婚式を挙げる事も、既に決まっているという事を聞いた



「晃くんの事は私も大好きだよ。…でも、気持ちには応えられないの。」

「見ず知らずの人間を相手に、そう簡単に諦められる訳がないだろう。だったら君と……」


『駆け落ちする』


そう告げようとした口は彼女の人差し指で押さえられてしまう



「そんな事したら妹さん、悲しむでしょ?」

「……っ、」


「晃くんのたった一人の家族なんだから。」


なまえの言葉に対し、頭から冷や水を被せられたように衝撃を受ける

私が妹の…葵の前から消えたら、あの子はどうやって生きていけばいいのか



「私の代わりに妹さん、大切にしてあげて。」

「なまえ…」

「ずっと大好きだよ、晃くん。」



そう言って彼女は寂しそうに笑い、私から離れていく


愛していても、手の届く距離にいても抱きしめる事すら出来ない

いつか、 この許されない恋を諦める事が出来るのだろうか


許されない恋

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財前さん、悲恋ばかり書いてごめんなさい。
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