『複雑』以上に相応しい言葉が思い付かない
「すみませーん。ホットドッグ、2つ下さい。」
「はいよ。ちょっと待っててくれ。」
放課後いつものように草薙さんの店へ行きホットドッグを食していた所、俺と同じ学校の女子生徒が店に立ち寄った
よくよく見るとそれは同じクラスのみょうじで、隣にいるのは友人なのだろうと容易に想像出来た
俺とは違いいつも沢山の友人に囲まれているのに、教室の端にいるような俺をも気に掛けてくれている少女
最近そんな彼女が少し気になっていた為、二人の会話にそっと耳を傾ける
「それにしてもなまえ。さっきの話、本気なの?」
「勿論!私はいつでも本気だよー。」
話の内容が気になって、全くホットドッグを食べ進める事が出来ない
…本気の話とは一体何なのだろうか
「まあずっと前からそう言ってたもんね、なまえは。」
「うん!私、Playmakerのファンクラブ作るんだ!」
「……っ!?」
…今、みょうじは何て言った?
思わず耳を疑うような言葉が聞こえてきたんだが
「もしかしてお嬢ちゃん、Playmakerのファンなのかい?」
「はい!LINKVRAINSでハノイの騎士と戦う姿がとっても素敵で…ファンになっちゃったんです!」
眩しい位の笑顔を浮かべてPlaymakerの事を語るみょうじの姿を見て、草薙さんは面白可笑しそうに俺の方を見やる
…やめてくれ、みょうじに気付かれる
「お嬢ちゃんみたいな可愛いファンがいて、ファンクラブを作ってくれるってんならPlaymakerも喜んでるかもな。はい、ホットドッグ。」
「えへへ、そうだったらいいんですけど。お店、また来ますねー。」
その後みょうじはホットドッグを受け取り、友人と共に広場を去っていく
「なあ遊作。さっきの子、前に言ってた同じクラスの子だろ?お前のファンクラブ、作る気満々だったな。」
「…俺じゃない。Playmakerのファンクラブだ。」
「結局は同じ事だろ?複雑な顔してないでもっと喜べよ。」
そう言って至極楽しそうな表情をしている草薙さん
…だが、自分が気になる人間が自分ではあるものの実際はアバター姿の自分へと憧れているという状況はどうにも手放しで喜べないだろう
『複雑』という言葉がこれ程当てはまる状況もなかなか無いのではないだろうか
そんな事を考えながら、俺は小さく溜め息を吐いた
『複雑』以上に相応しい言葉が思い付かない
―――――
ブルーエンジェルみたいにファンクラブありそうな気もしますが。