私は世界一の幸せ者
「…今日はお兄様が早く帰ってくる日。」
学校が終わり帰路へと就く中、私は足を進めながら小さく表情を緩ませる
部署が変わった所為もあるのかもしれないけどお兄様と過ごせる時間が目に見えて増え、私の心は満たされていた
「勉強の事も聞きたいし、折角だから夕食を手作り……」
様々な事を考えながら玄関の扉を開こうとした所、私の手はピタリと止まる
「…家の灯りがついてる?」
お兄様が帰ってくる時間にしては早いし、電気を消し忘れて出た記憶もない
「…まさか、泥棒?」
もし泥棒や強盗だったら今から警察に連絡するべきか
真相を確かめようと意を決して小さく扉を開いたその瞬間、中から誰かが飛び出してきて私を強く抱きしめた
「葵ー!会いたかったよう!」
「…っ、なまえお姉様!?」
飛び出してきたのはお兄様の双子の姉であり、私の姉でもあるなまえお姉様だった
「でも、どうしてなまえお姉様が此処に?お姉様は海外にいる筈じゃ…」
そう、お姉様は海外で仕事をしていて
次に帰って来れるのは今年のクリスマスだと言っていたのに
「最近晃が葵と一緒にいる時間が増えたって嬉しそうに言っててね。晃が羨ましいなって思って無理矢理、長期休暇を取ってきたの。2ヶ月はこっちにいられるわ。」
「…私と、一緒にいる為?」
「当たり前じゃない!幾ら仕事とはいえ、葵には今まで随分寂しい想いをさせちゃったからね。少しの間だけど、家族みんなで過ごしましょ。」
「家族…。」
なまえお姉様は幼い頃から成績優秀な人で
学校も飛び級で卒業した後、直ぐに海外の大企業に勤めて私達の暮らしを影から日向から支えてくれた
美人な上に頭がよくて
それでいてとても家族想いで優しい、なまえお姉様
そんなお姉様が私の為だけに帰国してきてくれたのだと思うと言い表せない程嬉しくて、思わず目頭が熱くなってしまう
「ど、どうしたの葵?私…何か嫌な事言っちゃった?」
「ちが…違うんです。なまえお姉様が私の為に帰ってきてくれた事が嬉しくて…」
私は両親を早くに亡くしてしまったけど、優しいお兄様とお姉様
二人に囲まれて本当に幸せなんだと、つくづくそう思う
「…おかえりなさい、なまえお姉様。」
私が精一杯の笑顔でそう告げればなまえお姉様は満面の笑みを浮かべながら「ただいま」と言いながら再度、私を強く抱きしめた
私は世界一の幸せ者
―――――
葵ちゃんにも幸せになってもらいたいです。