歪んだ愛のカタチ
「なまえ。」
「ん?どうしたの、スペクター。」
「ええ、なまえに少しお話が。」
「なになに、どうかした?」
そう言って私の愛する人、なまえは笑顔を浮かべながら私に近寄る
彼女とは三騎士の一人であるファウストを通じて知り合い、幾度となく電脳空間で顔を合わせていくうちに淡い想いを抱くようになった
その後なまえに私の想いの丈を告げた所、彼女は優しげに笑いながら私を受け入れてくれたのだ
「それで、話って何かな?」
彼女はいつも私の傍にいてくれて、私を優しく包んでくれた
まるであの大樹のように
「私はなまえ…貴女を誰よりも、何よりも愛しく想っています。」
「え……え、ええ!?ど、どうしたのいきなり!」
わたわたとしながら私の言葉に対し頬を林檎のように赤く染める彼女が可愛らしく、私はなまえをそっと抱きしめる
「でも…愛しいからこそなまえ、貴女を独り占めしたくなる。」
「独り占め?」
「片時も離れず、私の傍にいてほしい。私以外の人間が触れる事も許したくない。…リボルバー様にでさえ、そのような事を考えるようになってしまったのです。」
「…スペクター?」
何かを感じ取ったのか、彼女の声に不安の色が混じり始める
ですがもう手遅れなのですよ、なまえ
「ならば私以外、手を触れられない場所に貴女を隠してしまおうと。そう考えたのです。」
「スペクター…それ…」
「流石に察しが良いですね。なまえのご想像通り、これは電脳ウイルスです。感染すると昏睡状態に陥ります。」
自分の行く末を想像してしまったのか、なまえは私の腕から逃れようと必死に抵抗する
しかし男女の力の差は歴然、比べるまでもなく彼女が私から逃れられる筈等ないというのに
「大丈夫ですよ、なまえ。貴女の傍にずっと私はいますから。」
「あ……スペク、ター…ど、して…?」
私の手によって電脳ウイルスに感染させられたなまえは私の腕の中へ崩れ落ちるように眠りに就く
「…どうして?そんな事、答えは決まってるじゃないですか。」
意識を失ってもなお美しいなまえに目を細め、静かに額へ口付ける
「…貴女を愛してるからですよ、なまえ。」
例え歪んだ愛だと言われても構わない
これで愛しいなまえを私一人で独占出来るのだから、こんなに嬉しい事はない
意識を失ったなまえの頬へ静かに手を滑らせ、私はもう一度彼女を強く抱きしめた
歪んだ愛のカタチ
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最後は後悔に苛まれるかどうか迷ったんですが、スペクターが後悔する姿を想像出来なかった為こういう形に。