少しだけ震えた彼の肩
ほどよく焼けた肌に綺麗な藍色の瞳、自分のより幾分か深い栗色の髪。初めて会ったときその全てが魅力的だと思った。
「カズヤっ」
ノックの後にちょっと低めな声が病室に響く。ドアを開けて入ってきたのはフィディオだ。
俺が手術をして数日。目が覚めたその日、マークに説教されてディランに抱きつかれてと色々されたが今日はユニコーンの試合のせいかまだ誰も顔を出してはいなかった。だから今日初の来訪者はこのフィディオだ。フィディオの来訪は今回で2回目だが前回は円堂たちがいたのでまともに喋ることができなかった。もちろん円堂たちが来てくれたことは嬉しかったがフィディオと話せなかったことは残念だった。一応は恋人なのだから話したいと思うことは当然だろう。だから今回の来訪が嬉しくてつい頬が緩んだ。
「なんで笑ってるの?」
不思議そうにフィディオは尋ねてきた。別に隠す必要もなかったが首を傾げているフィディオがどうも可愛くて「別にー」と笑いながら返した。クスクスと笑っていると名前を呼ばれて返事をしようと口を開いた瞬間フィディオに抱きしめられていた。視界にあの栗色の髪がチラつく度にドキドキと胸が高鳴った。
「フィ..ディオ?」
「心配した」
すっごく心配したんだ、そう言ってフィディオは更に俺を強く抱きしめた。大切な人に心配をかけてしまった申し訳なさと心配してもらえる嬉しさから自然と涙が溢れた。フィディオも泣いているのだろう、小さな小さな嗚咽が聞こえる。
「フィディオ」
フィディオの背中に腕をまわして俺からも抱きしめ返す。暫くするとフィディオは顔を上げて俺をみて触れるだけのキスをした。その時、何故か周りが静かで世界中で生きているのが俺たちだけのような気がした。
さとねぇへのプレゼントです。さとねぇ以外は持ち出し禁止。
title by 確かに恋だった