招かれた客2 | ナノ








 日向は自分のコテージの出口に立ち、ふう、と息を吐いた。これは一種の賭けではないかと思う。だって、狛枝以外が来る可能性だってあるのに。澪田なんかは躊躇いもせず人のコテージにずんずん入ってきそうだし、左右田だって修学旅行と言えば恋バナだろ! とかなんとか言いながら乗り込んできそうだし。いくらこれまで夜の訪問者が狛枝しかいなかったからって。
「俺も……相当キテるな」
 狛枝と付き合ってもう1ヶ月ほど経っている。その間、かなり濃い時間を過ごした。それこそ、これまでの人生では考えられないような、ものすごいことをしてきた。けれど、ここ数週間、狛枝とはあまり過ごさなくなった。課題が切羽詰まっていたのもあるし、狛枝の希望のカケラ集めはかなり難航していたからだ(もちろん、日向のカケラはコンプリート済みだ)。
 日向も事情はわかっていたし、快く了承していた。つもりだった。今日の昼間、狛枝と目が合った時、自然な動作で逸らされるまでは。そんなことがここまで堪えるなんて思わなかった。これまでだったら、手を振るなり笑うなり、何かしらの反応があったのに。
 もしかしたら。日向は考えを巡らせる。
 日向以外にも仲良くできる人が増えて、日向を選ぶ理由がなくなったのではないか。今日は罪木と過ごしていたようだし、傍目から見ても、少しおかしなところがあるふたりとはいえ、お似合いだった。そうなると、男を選ぶ理由だって、きっとない。

 日向創を選ぶ理由だって、ない。

 それでも。拳を固く握って、もう1度開く。身体の関係だけだっていい。この島にいる間だけだっていい。
 そんなふうに自分の気持ちに嘘を吐いて、狛枝凪斗を待つために、日向創は鍵に手を伸ばす。
 内側から解錠されるかちゃり、という音が夜闇に響いた。








「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -