2010沖田誕記念
バシッ。嫌な音がしてそれは地面に落ちた。
「何すんでぃ」
落ちたそれを拾って沖田は顔をしかめた。
明らかにプレゼント用に包装された袋。貧乏な万事屋では包装などありえない。
「これぁなんですかぃ」
まさか。いや、彼女ならあり得る。
「七夕とあわせて1日早いけど誕生日祝いアル」
やはりそうきたか。
七夕の彦星と織姫のように二人きりで会いたいと無理矢理取り付けたデートの帰り、その出来事は起きた。
正直プレゼントは期待していなかったので、(彼女の財政状況を考えると当然とも言える)その分嬉しさが倍増する。
「まさかと思いまさぁが酢昆布とかじゃねぇだろねぃ」
「さあなっ」
神楽は空に向かって傘をくるりと一回転させると沖田に背を向けて歩き出す。
「自分の目で確かめるネ」
じゃあな、と傘をふって神楽の姿はだんだん小さくなっていく。
ついに一人になった沖田は紐をゆっくりといて中を開く。
「これは……」
指でつまんで持ち上げたのはバズーカ型のキーホルダーだ。当然沖田が使っているものと同じ型である。
沖田はそれを見つけた時の神楽の顔を思い浮かべてくすりと笑みを溢した。
「あいつはバカでぃ」
そう言いながら上を見る彼の口は半弧を描いていた。
「星が綺麗でさぁ」
満天の星空が広がっている。梅雨時にも関わらず雲一つない。
「帰りますかぃ」
彼はポケットに手を突っ込んで歩みはじめる。
明日彼女に会いに行って一番に祝いの言葉を言わせる為には今から寝ないと間に合わない。
明日のことを考えるだけで沖田は体が軽くなるのを感じた。

一筋縄ではいかないだろうが絶対当日に言わせてみせる。沖田は天の川に一人誓うのであった。

『誕生日おめでとう』

そう彼女に言わせるために。



〈end〉
2010.07.08


沖田誕生日おめでとう!
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