君が笑ってくれるなら…
最近あの子はよく泣く。





でも彼が涙を流すのはいつも忌々しいあいつのことだけで。



悔しいけど、僕がどんなになってもきっと彼は泣いてくれない。



だからなんだという話だけど。



だから、僕は君を泣かせないし泣かさない。



君が笑っていてくれるなら、なんでもやってやる。


彼がもう二度とあいつのことで泣いたりしないようにー…



あいつがいなくなってから、沢田は笑わなくなった。






いつも不安げにどこか一点を見つめている。






僕は君のそんな顔は見たくないんだ。








沢田の想い人―六道骸が生死不明になってから1ヶ月。




その間に彼は何回泣いただろう。


いつも隠れて泣いていたのだが、赤く腫れた目は誤魔化せない。







「ヒバリさん…骸、生きていますよね…」



そう言って沢田は笑った。


目に涙を浮かべながら。



僕なら、そんな顔をさせないのに。





「ねぇ。僕だったら…」



そんな顔、させないのに。




はは…と沢田は笑った。







「ありがとうございます。」





だけど、俺は待ってなくちゃいけないんです。








嗚呼、もう僕が入る余地はないんだね。




誰も知らない僕の気持ち。




多分これからも知られることはない。






「彼のためなら」


なんでもする。




だから、君はどこかで笑っていてほしい。





「弱いばかりに群れをなし―…」

咬み殺される袋の鼠…








「ヒバリが一人で迎え撃っているだと?!」




「大変だっ。俺たちも…」


「ならん!それではヒバリが体をはる意味がなくなる!!」


「でも…ヒバリさんがっ…ヒバリさんヒバリさんっヒバリさん!!」

「沢田っ!!」





雲雀さんっ…お願いします…


どうかご無事で―…






そして彼は今日も泣く。


突然自分の前からいなくなってしまった人を想って―…




彼は何時になったら笑うのだろうかー…。




(君、また泣いていたでしょ。)

(バレバレ。だから、今度泣くときは僕のところに来なよ。)


「…バリ…さ…」
行くところさえ無くした羽のもげた鳥は、どこに行けばよいのだろうか…。

2009.05.23
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