恋するシンデレラ
「そういえば、ダメツナってシンデレラって名前お似合いだよな」



「あーそれわかる。だけど、ダメツナの場合、魔法使いとやらが出てこなくて、一生灰かぶりなんだよな。」


「ダメツナシンデレラは恋なんかしちゃいけないのさ。」


ギャハハハ…




そばで偶然それを聞いていた沢田は、唇を噛み締めて、泣きたくなるのを、ぐっとこらえた。



確かにそう言われれば、そうかもしれない。



この前やっと思いが通じたヒバリには迷惑ばかりかけている。



しかも、一度も「好き」と言われたことがない。



ダメツナとずっと現在進行形で呼ばれている沢田は、ネガティブに物事をとらえてしまう。


(俺は恋してはいけないシンデレラなのかもしれない…)


これ以上ここにいる勇気はなく、だまってその場を去ろうとしたら、誰かに腕を掴まれた。


「確かにそうかもしれないね」


「ひっヒバリさ…」


(確かにそうってどういうことー!!)


沢田の心の中でのツッコミは当然誰にも伝わらなかった。

ヒバリは沢田を抱き寄せて、男子生徒達を睨んだ。


「…でも、シンデレラにだって恋して恋される権利はあると思うね」


「ひ…ヒバリさん…」



「君も突っ立ってないでなんか言ったら。」


しかし、沢田はヒバリの顔を見て安心したのか、ポロポロと涙を溢した。

「なんで…来たんですか?」

(俺のこと、ホントは好きじゃないくせに)


いつの間にか男子生徒達はヒバリによって咬み殺され、いなくなっていた。


「…なんでって…。」

ヒバリは言葉を濁した。

「ぅぅ…っヒ…バリさっ…」

「…なに?」


「…っく…す…き…です…」



ヒバリの思考回路が停止した。不意打ちだ。


「ヒバリさんは…俺のこと…どう思ってますか…?」

少し落ち着いたらしい沢田が、涙目でヒバリを見上げた。


その様子があまりに綺麗だったので、思わず目をそらしてしまった。


「…やっぱり好きじゃないんですね…」

「そんなこと、」


「だってヒバリさん一度も好きって言ってくれないじゃないですか!!」



そう言われて、ヒバリはそういえばそうだったと思った。



「俺ばっかり好き好き言ってて…バカみたいじゃないですか!」


「だって君馬鹿じゃない。」



「なっ…」


反論しようとしたが、出来なかった。


口を口で塞がれてしまっていたから。



ようやく解放されたと思ったら、今度は思いっきり抱き締められた。


「ヒバリさ…」


「好きだよ。」


沢田は目を見開き、また目に涙を浮かべた。



「不安にさせてごめん」


「そんなこと、」

ないですと言う前に、口を塞がれてしまった。


「君は僕が選んだんだから、もっと自分に自信を持ちなよ。」



君が望むなら、いくらでも好きって言ってあげる。

いくらでもキスしたり、抱き締めたりしてあげる。



「シンデレラは幸せになったからこそ、シンデレラなんだよ。」
「恋をしないシンデレラなんてシンデレラじゃないよ」


恋をし、最後は幸せになるからこそ、シンデレラはシンデレラなんだ。




シンデレラは最後、お姫様になったように、君だって僕にとってはお姫様なんだよ。




恋して、恋されて、それでこそシンデレラなんだ―…



〈end〉

2009.04.12
(お題提供:エナ様)
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