ブアァッ…
桜が舞い散る春。
俺は吹き荒れる桜に手を伸ばすが、指の間をすり抜けていってしまう。
俺は暇をもて余していた。
そんな中、綺麗なテノールの声がした。
「何やっているの」
「ヒバリさんっ」
俺はヒバリさんのもとに駆け寄る。
「もういいんですか?」
入学式は、と俺は訪ねる。
「うん。もう終わったよ。あんまり長くいると咬み殺したくなる」
「わーっそれはダメです!!」
「うん。君との約束だからね」
そう言って雲雀さんはふわりと笑う。
俺にしか見せない(と思われる)この笑顔。俺以外に見せてほしくないなあと思った。
「約束、守ってくれたんですね」
「うん。『入学式で誰も咬み殺さなかったら、一つだけヒバリさんの言うことを聞きます』とか言われたら、従うほかないでしょ」
あははと俺は笑った。そんなことで俺の言うことを聞いてくれるなんて、愛だなあと一人でのろけてみる。
「何ニヤニヤ笑ってるの」
気持ち悪いと雲雀さんは呟く。
「ヒバリさん」
「何」
「好きです」
「知ってる」
強い風が吹き、俺達の周りを桜が舞う。
まるで、俺達を隠すように―…
(何でもいうこと聞くんだよね?)
(…?はい…)
(じゃあ沢田からキスして)
(んなあ?!)
中々進展しない恋人同士な二人の話。
〈end〉
2009.04.26
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