雪が降るんじゃないかという位寒い大晦日の夜、一人の青年が軽くくしゃみをして公園のベンチに座った。
厚着をしているようだがやはり寒いのか震えていた。
そのベンチには先客があり、青年の隣には黒い服を見にまとった人間らしき者がベンチの半分を占めていた。
普通なら不気味がるが、青年は職業が職業のため黒ずくめには見慣れていた。
「寒いですね」
はーと白い息をはき黒いそれに話かけるが返事はない。
それでも青年は話しかける。
「寝てるところを邪魔してすみません」
黒いそれはぴくりとも動かない。
僅かな街灯が二人を照らす。
「ちょっと愚痴らせてくださいね」
青年は返事がないのを良いことにそのまま話続ける。
「俺、恋人がいたんですけど、5年前に突然いなくなってしまってから連絡一つないんですよ。」
ひゅう、と冷たい風が二人の間を通りすぎる。
「よく考えたら一度も好きだと言われたことがないんです。恋人みたいなこともしたことないし」
「今生きてるかわかんなくて。俺、振られたのかなあ」
ため息は白く夜空に登り消えていった。
「…未練がましいですよね」
今まで誰にも弱さを見せないように生きていた。
見知らぬ他人だから言えた本音。
止まることを知らない。
目の前が霞んで来てくる。
街灯が滲む。
「…逢いたい」
「逢いたいんです…」
サラリと前髪を何かが触れている。
目をあげると先程の黒ずくめの人が目の前にいた。
逆光で顔は見えない。
しかし急に懐かしさを覚えた。
「…ごめん」
「え」
目を見開くと顔が近付いていく。
「、ひばっ」
男は名前を呼ばれると柔らかく口角をあげる。
「待たせたね
沢田」
二人の唇が触れあう頃、空から白い天使が祝福していた。
〈end〉
2010.01.01
あけましておめでとうございます!
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