毎度のこと。
※幼なじみ設定


「いってきます」
「いってらっしゃい!」

今日も俺は寝坊してパンをくわえながら走る始末。
我ながら凄いと思う。こう毎日寝坊するなんて。もう特技の中に入ってもいいと思う。

そんなことを考えながら俺は全力疾走する。
間に合うか。間に合わないか。
校門まであと少し。時間もあと少し。
もう口から何か出るんじゃないかという位走って校門を無事すり抜けた瞬間、チャイムが鳴った。

「ま…間に合っ…」
息も絶え絶えで喋ることすら儘ならない。でも今日は。

「間に合ったね」
「!」

ヒバリさん!と言おうとして言葉が出なかった。喉が千切れそうだ。

「そんな無理して走るからじゃない」

「そ…です…ね」

14年一緒にいたのにこの差は何なんだろう。

毎朝俺が起きるずっと前から学校へ行き、風紀検査を行う。授業こそはサボっているが(彼曰く『群れは嫌いだ』かららしい)成績は良い。

容姿端麗文武両道。これだけ聞けば余りに完璧すぎる。女の子が黙っている筈がないが、彼には決定的な欠点――人間離れした思考回路と性格の持ち主であるが故未だかつて彼女という彼女は出来たためしがない。

身長は高く、細く白いのにちゃんとついている筋肉。男から見ても惚れ惚れする。

対して俺は身長は低い(女の子とそう変わらない)上頭も悪い。日本人の癖に茶色い跳ねた髪。力なし筋肉なり運動神経なし。14年一緒にいるのに彼の余りの威圧感に押し潰されそうになり未だに彼の目の前では呼び捨てなんかではなく「ヒバリさん」と呼んでしまうほどのヘタレ。情けないったらありゃしない。


「早く行かないと授業始まるよ」

ヒバリさんがしゃがんでいた俺の腕を掴んで無理矢理立たせた。


顔は見るからに呆れて物も言えないよと語っている。

どうせ彼は出る気はないだろうが一応聞いてみる。

「ヒバリさんは…授業」
「出るわけないだろ。あんな群れの中に入る気は更々無いね」

ああやっぱり。まあ多分教師達も出席させる気は皆無なんでしょうけどね!

俺は取り敢えずハハと乾いた笑い声を出して教室に向かった。

もし彼が心を許す相手―女に関して、のみだが。が出来たとしたら是非相手の顔を拝んでみたいものだ。(きっとすっごい強い女の子なんだろうな)

想像したら吹き出してしまった。

彼に言ったらそんな下らない事を考える暇があるなら勉強しろ、と言われそうだ。


さて、どっちが早いだろうか。彼女が出来るのは。

(なんかどっちも一生出来ない気がするのは気のせいか?)

同じ頃ヒバリが応接室で二回軽くくしゃみをしていたのを沢田は知らない。


〈end〉

2009.09.22
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