…ブチッ
「もういいですよーくわかりましたさようならっ」
沢田はそう言い捨てると、その場をあとにした。
先程の音は、彼の堪忍袋の緒が切れる音である。
「ねー骸聞いてる?!」
「聞いてますよ…」
骸のアジト(?)で沢田は彼に詰め寄る。
「ヒバリさんってホント鈍い!!」
沢田は怒っているのだが、骸にはそうは見えない(寧ろ可愛い)。
「それ、前も聞きました。」
「あれっ?そうだっけ?」
首を傾げる姿は可愛い以外の何でもない。
そうですよ、と骸はため息をついた。
「貴方も負けず劣らず鈍いですよ…」
は?どこが?と当の本人は目を丸くし、首を傾げる。
沢田の周りにいる人間が彼に好意を寄せていることや、骸が死ぬほど告白しても冗談にとる所など、鈍い以外の言葉で表せようか。
「…まあいいです」
今更な話ですし。
「ところで、彼のどこら辺が鈍いと?」
話を戻した瞬間、沢田の顔付きが変わった。
「俺、バレンタインに本命チョコレートあげたし、誕生日にはプレゼントまであげたのに!!!」
「…あげたのに?の続きは…?」
「ヒバリさん俺の気持ちに気付いてないんだ!!」
…そうですか。
(…まるでのろけのようです。綱吉くん…)
骸は心の中で悲しそうな顔をした。
何が悲しくて、思い人ののろけ(としか聞こえない)を聞かなきゃならないのか。
「しかも極めつけに、『俺のことどう思いますか』って聞いたら…」
「…」
「『草食動物。』って即答されました!!」
うわああんと沢田は骸に泣きつく。
普段なら、願ってもないことだが、状況が状況なため、骸の心境は複雑だ。
「…じゃあ、素直に好きといえばいいじゃないですか…」
「え…」
どうやら沢田の頭の中には、そういう選択肢はなかったようだ。
「…まさか、考えてなかったとか…」「そっそんなことない…」
「嘘つきは泥棒の始まりだと習わなかったのですか?」
「うぅ…」
沢田はあまりの恥ずかしさに真っ赤になった。
忘れていたとはいえ、恥ずかしすぎる。
「…鈍いなら、はっきり言わないと、気付きませんよ?」
「…そう、だね…」
沢田は一大決心をしたかのように真剣な顔つきになった。
「俺、告ってくる!骸、ありがとう!!」
そういうが否や沢田は全速力でアジトをあとにした。
「…まあはっきり言っても冗談と思われる場合もありますが…」
後に残された骸がボソッと呟いた。
その顔は泣き顔に見えたとかそうでないとか。
2009.05.23[ 7/17 ]