毎度のこと2
※雲雀と骸と綱吉が幼なじみ。毎度のことの続編のような何か。



「ヒバリさん……」
俺は門のまえで腕を組んで立っている。こんな格好をしても少しも格好よく見えないのは何故だろう。
かれこれ一時間こうして立っているので腕は痺れ足は既に棒と化している。体勢を崩せばいいのだが、男の意地かよくわからないがこの体勢を崩したら負けだと思う。でもこの体勢はきつい。
(黒曜中の文化祭になんか来るんじゃなかった)
元はと言えば二週間前、文化祭の招待状を骸からもらった時点で嫌な予感はしていたのだ。
骸は当初俺だけを誘うつもりだったようだが、何とか説得して、『彼を招待する気はサラサラないのですが、綱吉くんがそういうなら』とか言ってヒバリさんに渋々招待状を渡させたのだ。幼なじみなのだから俺だけでなくヒバリさんも招待すべきだと思ったからだった。
今現在黒曜中の校舎からは度々女の悲鳴に近い奇声が上がっている。
「モテすぎだろ…」
男から見ても惚れ惚れする容姿を持つヒバリさんは初対面の人間―所謂その人間離れした性格を知らない人間は必ずと言って良いほど惚れるのだ。ただ、そうすると彼が一番嫌いな群れの中にいることになるので彼が女の子に手を挙げやしないか今でもヒヤヒヤしている。
女の子の悲鳴がヒバリさんの容姿に対するものなのかその人間離れした性格を目の当たりにして助けを求める悲鳴なのか此処からじゃわからない。
俺は右手に持っていたオレンジジュースを左手に持ちかえ、ポケットからケータイを取り出した。どうせ返信は返って来ないだろうけど駄目元だ。
電源ボタンを押し、起動させてからボタンを打った。
『ヒバリさん、今どこですか。大丈夫ですか。P.S 前から言ってますけどいくら群れてる気に食わないからと言って女の子には手を出さないでくださいよ』
追伸の方が長かった。
実はメールアドレスを彼から教えて貰って以来メールをしたことがなかったから少し緊張する。心臓の音が余りに五月蝿すぎて胸を手で押さえ付ける。拒否られてたらどうしよう。
いくら幼なじみとはいえ彼にとってはやりかねない話だ。指先の震えは止まらないが思い切って送信ボタンを押した。
すぐ、画面に『送信完了』の文字が出てメールも返って来なかったので送れている。良かった。
俺はほっとしてオレンジジュースを飲んだ。
一時間前に買ったそれはもう随分温くなっていた。
ブブブと僅かにバイブが鳴り、周りの雑音が一瞬止んだように思われた。
ま、さ、か。
メールを見るのが怖い。二度とすんなとか言われたら流石の俺でも立ち直れない。
元々俺達三人は幼なじみというのは名ばかりで殆ど赤の他人と言っても過言ではないの関係なのだ。まあ骸は俺には何だかんだ理由をつけて今でも交流しているしヒバリさんとも時々朝一緒に学校に行ったりしているが所詮その程度である。
パカッと軽い音がしてケータイの画面が現れる。
新着メール一件という表示を選択し開く。
送り主は雲雀恭弥。内容はただ一言。
『君の目の前』
ガバッと勢いよく顔を上げると心底不機嫌そうな彼がケータイを持って立っていた。
その顔を見ると、群れの中にいても俺の言い付けを守り、黙って堪えていたことがわかる。
「女が群れてきたから後は骸に任せた」
そう言ってスタスタと歩き出す。俺は彼に置いていかれないように一生懸命付いていく。
「ヒバリさん」
そう言って声をかけても振り向かない。毎度のことだ。気にしない。
「待ち合わせの時間に一時間以上遅れましたよね」
そうなのだ。お互い自由行動で待ち合わせ場所と時間を前もって決めていた。どんな理由があれ、彼は守れなかった。
「君、何が言いたいの」
俺はきっとしてやったりな顔をしているだろう。
「奢ってください」
「は、」
だって約束しましたよね。遅れた方はその日1日相手の言うことを聞くってね。


〈end〉

2011.04.03


一年半前に書いて放置していたものを多少直してあげてみました。恋愛要素低め。ツナが押せ押せ。でもこんな関係の二人、大好きです。
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