役立たずな僕から花束を4
「ヒバリのせいでこんな目にあってるんだ」
「復讐しなきゃ気がすまないよね」
次々に投げ掛けられる暴言に抵抗するほど俺にはもうそんな力は残っていなかった。
ただされるがまま、喘ぐ。揺さぶられる。周りは赤い。手を伸ばしてももう俺の両手は汚れたまま。それでも求めてしまう。
「ヒバリさんっ助けてっ」
嗚呼。あの時俺は最後に彼の名前を呼んでいたんだ。返される事もなく俺は彼に対する感情の形を変えてしまったが。
「沢田っ」
「ヒバリさんっ」
そして目が覚めて彼の姿を認めた瞬間、俺は彼に襲い掛かった。それが始まり。
あの時呼ばれることのなかった声がする。あの時とはもう違うんだ。呼べば彼はきっと来る。俺は卑怯だ。あんなに傷付けたのに本能が彼を手離させなかったのだ。彼が俺に逆らえない立場なのを利用して。
ハッとして目を開く。辺りには誰もいない。もう終わったのか。
呼吸を整える。辺りを見渡す。先程の何ら変わりのない部屋で本当に治ったのか不安になる。
「……ヒバリさん」
カツン。固い床を靴が跳ねる。その音はだんだん近付いてそして。
「この部屋には盗聴器でもあるんですか」
「知るわけないだろ」
俺の周りには凶器になりうる物が全くない。きっと万が一の為だろう。
「ヒバリさん、嫌いです」
くすくす笑って言う。
彼は目を見開いて、口元に笑みを浮かべた。
「知ってる」
「あの、もう少し近付いてきて下さい」
彼が今でも俺をだなんて虫が良いことは流石に考えていない。それでもきっとこうして側にいても何もしてこないから嫌われてはいないと思う。
「殴ってもいいんですよ」
「後片付けは誰がやるの」
「俺じゃないですかね」
「やられているのに?」
一歩。また一歩とゆっくり近付いてくる。それまでの二人の時間を距離を越えて彼は来る。
「ヒバリさん。聞いてください」
そっと彼の体を抱き寄せる。彼は一瞬身を強張らせてそれでも好きにさせてくれている。
「あの時の返事。もう遅いかもしれなっ」
鼻がつんとしてくる。これは最後まできちんと言えるか不安だ。それでも言わなければ。
「っ、俺、ほんとは、ヒバリさんのこと」
「……うん」
「す、き」
好き。所詮そうなのだ。好きだから側に置いた。何だかんだ俺が止めを彼にさせなかったのは本能が止めていたから。好きだから。
「本当に、好き」
涙声でちゃんと言えているのかわからない。
「大好き」
やっと言えた。
好きでいてごめんなさい。傷付けてごめんなさい。あの時助けてくれたのに。
ねぇヒバリさん。俺は幸せになれますか。もう遅いですか。
幸せになってもいいですか。
「ヒバリさんを幸せにしたい」
「ヒバリさん、幸せになって下さい」
矛盾しているけれどこれが俺の本心。
どうかこれからは俺の側に彼がいてそれでいて彼が幸せになりますように。
願わくは俺が彼を幸せにしたい。
もう遅いかもしれないけれど。



〈end〉

2011.03.21

はじめまして、遠藤彰です。
二周年ありがとうございます。
正直ここまで長く続くとは思いませんでした。
初期と比べるとだいぶ作風が変わってしまいました。おそらくこれからも変わり続けます。進化しているといいな。
需要アンケートでヒバツナ、シリアスが人気だったのでヒバリを見ると殺したくなるツナとそれでもツナが好きなヒバリの話を書いてみました。勢いと夜のテンションで書いたので後で書き直したい、です。願望です。
それでは、本当に二周年ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
お題はX、さんよりお借りしました。
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