役立たずな僕から花束を
いつも夢を見る。それはいつも同じ夢で目覚める所もいつも同じだ。
俺の目の前で誰かかが犯されている。誰だかはわからない。俺も助けたいのに体が動かない。
嫌だやめて。悲鳴と快楽に呑まれた喘ぎ声と水音が耳にねっちょりとまとわりつく。耳を塞ぎたいのに体が言うことを聞かない。
そして最後に、それを見ている俺が殺意と嫌悪感を沸き上がらせて、こう叫んで目が覚める。
『―さん助けてっ』
今日もまたこうして現実にもどってくるのだ。



俺はヒバリさんが嫌いだ。いつから、どのくらいと言われてもわからない。ただ気が付いたら嫌いだった。
最初、俺が中学生の時はそんな感情を抱くほどまだ親しくなかった。今だってそんなに関係は変わっていない。
だが、駄目なのだ。
「沢田綱吉、例の書類」
執務室にヒバリさんが入ってきた。ヒバリさんも俺に嫌われているのは知っているため必要以上に近付かない。
しかし駄目なのだ。目に入ると殺したくなる。
ほら今だって護身用に常備している銃を彼に向けている。
俺の彼に対する嫌いという感情は殺意と嫌悪感を伴うものだ。夢の中でのように。
殺したい殺したい憎い憎い吐き気がする。
直感で彼にこうするのは違うと叫んでいるが言うことが体は聞かない。
彼はそれをわかっているので極力俺には近付かない。どうしてもの時は来るが、その度に俺はこうなる。その度にヒバリさんは傷付いたような悲しい笑みを浮かべ、言うのだ。
「そんなに殺したいなら殺せばいいのに」
無理なのわかって言っているからたちが悪い。
手汗で銃を持つ手が滑る。
「俺は、撃ちたくない」
「でも君の体は殺したくて仕方ないんだろ」
「逃げてください」
「、」
ヒバリさんは動かない。早く早く早く。声を振り絞って俺は叫んだ。
「逃げて!これは命令だっ」
「……si、ボス」
ヒバリさんはやっといなくなった。俺はゆっくりと感情の波がひいてくるのを感じ、手の力を抜く。銃はするりと手から離れ、無機質な音を部屋に響かせて地面に落ちた。
俺はそっと備え付けのソファーに横たわる。涙が止まらない。いつもこうして自己嫌悪に陥る。もうこんな自分何か死ねばいい。
何度そう思ったことか。
しかし銃を自分に向けたことはない。否向けられない。俺が死んだ後を思うと向けられないのと体がそうは動いてくれないのだ。泣くなら仕事にプライベートを持ち込むなと言われそうだが、もうどうにもならない。原因もわからない。
ごめんなさい。ごめんなさいヒバリさん。
嫌われているとわかっていても態度をずっと変えずにいてくれるヒバリさんの優しさにさらに涙腺を刺激される。
ぽたり、ぽたりと頬を伝って落ちているこの涙はきっと濁っているのだろう。
俺の体は醜くて汚い。
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