1日遅れのエイプリルフール
今日はエイプリルフール。どんな嘘もついていい日。沢田はこの日が来るのをずっと待っていた。
(今日こそ雲雀さんをギャフンと言わせてやる!)

とは思ったものの、馬鹿な沢田には彼を騙す方法が思い付かない。

(どうしよう……)

とりあえず、休みであるが雲雀に会わないと騙す以前に話にならない。

とにかく、今は学校に向かい雲雀に会うのが最優先と沢田は判断した。

春一番が吹いているのか風が強く沢田の癖の多い髪ですらなびいている。

学校に着いたとき、あまりの風の強さに思わずよろめいてしまった。

「そのままだと飛ばされそうだよね」
君は。そういって休みにも関わらず学ランを羽織り、クスクス笑っている人物が現れた。
「雲雀さん!」
待ち望んでいた人物に会えたがさてどうする。
こうやってただ突っ立っている間にも春一番は吹き抜ける。
あまりにも冗談ではなく飛ばされそうな沢田を見かねたのか、「まあ来なよ」と言って雲雀は自分のテリトリーへの侵入を許した。

「で、何の用」
応接室に入り二人きりという美味しいシチュエーションの中、沈黙を破ったのは雲雀である。「あ、あの……俺、好きな人がいるんです」
苦し紛れの嘘を吐いてみたが、相手にはバレバレのようでため息をつかれた。
「へぇ。」
頬杖をつきこちらを見る目は若干笑っているようにも見える。
「あの……誰、とか聞かないんですか」
「聞いてほしい?」そういうと彼は愛用のトンファーを沢田目掛けて投げた。それは沢田の顔すれすれの壁に鈍い破壊音と共に突き刺さる。沢田は冷や汗が流れるのを感じた。
目の前の雲雀の口角は怪しげに上を向いている。
沢田はくらりと目眩を覚えた。
上手だ。この人は俺の何枚も上にいる。だませっこないんだ。
自分の浅はかな考えに怒りすら覚える。相手を間違えたのだ。
「すみません……エイプリルフールなので調子に乗って」

ここは素直に言った方が罪は軽くなると判断して即座に罪を告白する。
「違うだろ」
「へ?」
違うって何が?雲雀の発言に頭が混乱して脳内にハテナマークが大量出現する。そんな沢田を見て雲雀は彼に近付きながらクスリと笑う。
「君は僕が好きなんだろう」
沢田綱吉。
あ、と僅かに声をあげて沢田は赤くなりながら口を手で覆う。
彼は好きな人がいる、と言っただけで他に好きな人がいるとは言っていない。沢田は雲雀と付き合っているのだから、好きな人と言われれば雲雀に決まっている。
沢田綱吉。痛恨のミス。
「今度僕を騙すときはもっとましな嘘をつきな」
そしてこれは僕を騙そうとした罰。
そう言って無理矢理沢田の手を退かせて唇に己を重ねた。


〈end〉

2010.04.02
[ 1/12 ]
(*Prev│表紙│Next#)
top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -