ゴースト×ゴースト
この状況、一体何だというんだ。ただ一つ言えることは俺、ここにいていいんだろうか。


ゴースト×ゴースト



「あの…何で俺ここにいるんでしょうか」
「だって君が僕と一緒に夏祭り行きたいって言うから」
「確かにそうですけど」
だってヒバリさんとそういう関係(まあ友達以上ってことね…)になってからお互い忙しくて(ヒバリさんは風紀の見回りで、俺は補習とか補習とかで)デートとかも儘ならなかった。
だから、こういうイベントで初デートを飾りたかったのだが、これはどうみても恋人同士でやることではない。
(なんでショバ代回収に付き合わされているんだろう)
よく考えれば去年も風紀委員がショバ代回収をしていたので、当然といえば当然の行為をヒバリは行っているのだが、それは甘いデートを夢見ていた沢田にとってショック以外の何者でもなかった。それでもヒバリと一緒にいられる、ということだけでもう何もかもどうでもよくなってしまっている沢田は自分が単純であると嘆く。
「…あれ?」
暫く自分の世界にトリップしていたらいつの間にか隣にいた人物がいない。
(も…もしかして、はぐれた?)
沢田は自他共に認める方向音痴なので、下手に動かない方が一番良いのだが、そんなの馬鹿な沢田はわからない。
迷子というのは自分が迷子であると認識すると気も動転してあちこち動き回りさらに迷うというデフレスパイラルによく陥る。
これは勿論沢田にも当てはまる。
沢田が叫び疲れてヒバリさん、と呼ぶのをやめた頃、沢田の周りに人はいなかった。
(…なんで森の中にいるんだろう。俺)
それは訳もわからず走り回ったせいなのだが。
辺りは人気が全くなく、夏なのに肌寒い風がサアッと吹いて沢田の髪を僅かに揺らす。
「ヒバリさーん…」
彼は今頃屋台を何個か潰していることだろう。
(ショバ代か払えないとかヒバリの気に障ったとか何とかで)

彼の名を呼んでみるも、当然のように返事はない。

(どうしよう…)
取り敢えず今来た道を戻ろうと沢田は180度体の向きを変えて歩き始めた。

暫く歩くと自分以外の声が聞こえてきた。

近づくに連れてはっきりと。

自分の呼ぶ声が。

「沢田綱吉!」
「ヒバリさん!」

ヒバリはわざわざこんな暗い森の中まで探しに来てくれたのだ。何故ここにいるということがわかったのだろう。

(まあヒバリさん、だからだよね)

とにかく沢田はあまりの嬉しさにヒバリに抱きついた。
ヒバリもそれを無理に引き剥がそうとしなかった。
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