afternoon tea
とある日の午後の昼下がり、一人の少年が廊下を走る。

今は弁当を食べる時間なので、生徒の出入りが少ないのを良いことに、階段をかけ上がり、立ち入り禁止と書かれた看板を跨ぎ、ドアノブに手をかけた。

少年は辺りを見渡して誰もいないのを確認してドアを開けた。

このドアは屋上のドアなので、普段は立ち入り禁止となって鍵が掛かっていた。
今屋上にいる少年―沢田綱吉はほんの好奇心で予め針金を使って鍵を開けておき、屋上へと入ったのだ。

「一回屋上で弁当食べてみたかったんだよな〜」

綱吉はそう呟くと堂々と弁当を広げて食べ始めた。

綱吉はついこの間まで一人だった。
今は自称右腕の獄寺と野球部のエースである山本と一緒にいることが多かった。ただ、散々「ダメツナ」呼ばわりされていたので(今でも呼ばれているが)今さら一人で弁当を食べることに抵抗を感じなかった。ただ、一人で教室で食べるのはあまりにも虚しい(今日、獄寺と山本は偶然二人とも休みなのだ)ので、誰にも邪魔されない場所を探して見つけたのがこの場所―屋上だ。立入禁止だから、人が来るはずがないし見晴らしもいいので、絶好の場所だったのだ。

「んーお腹いっぱい」
綱吉はうーんと大きく背伸びをして弁当を片付けた。
のどかな午後。ちょうどいい気温な上弁当を食べた直後の満腹感で綱吉はとろん、となり目を瞑った。
(ま、いいか。どうせ昼休みだし)

その考えが甘いことを後々綱吉は思い知ることになる。

「ん…」
綱吉は目を薄く開けて、のそりと起き上がった。すると、ばさり、という音をたてて、綱吉の肩から何かが落ちた。
「…?」
拾い上げると、それは学ランのようだった。
(なんで学ランが…?)
突如綱吉ははっとしてそれどころではないといわんばかりに時計を見た。時間は三時をまわっていた。
「あああああ…!!」
しまった。二時間も寝てしまった。午後授業サボっちゃったよ。どうしよう。綱吉は後の祭りなのだが、頭を抱えた。
「やっと起きたんだ」
たん、と軽快な音がして、その人は降り立った。どうやら今まで屋上にあり倉庫の上にいたようだ。
綱吉はその人物の顔を見た瞬間血の気が引いた。
「ヒ、ヒバリさっ…!!」
てことはこの学ランはヒバリさんの!?持っている学ランをよくよく見ると、袖のところに『風紀』とばっちり書かれていた。
この人に見つかったのが運のつき。絶対咬み殺される。綱吉は死を覚悟してぎゅっと目を瞑った。目を閉じながらふるふると震えてヒバリに学ランを差し出す。ヒバリはそれを受け取り、肩にかけた。
「ねぇ」
「ひぃっ…な、なんでしょうか」
綱吉のあまりのびびり様が面白かったらしく、ヒバリはふ、と小さく笑った。
「昼寝見逃してあげるから応接室に来なよ」
「は、はあ…」
綱吉はとりあえず生き延びたと胸をなでおろす。しかし見逃すといっても応接室に着いたらやっぱり咬み殺されるのだろうと肩を落としながら黙ってヒバリの後をついていった。
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