「…」
「…」
「あの…」
「何」
「とりあえずそこはあれなんで…座りませんか?」
先程憎々しい家庭教師が意味深な言葉を吐いて消え去ってからどのくらい経っただろうか…
普段なら会話するどころか同じ空間にいりことがないような人と二人きり、それも好きな人というおいしいシチュエーションなのだが何故か素直に喜べない。
(絶対リボーンのせいだ!)
とりあえずここは家庭教師のせいにしておくのが無難な気がした。
雲雀はというと沢田の勧めの通り座っていた。(ただしソファーの上だが)
「君さ」
「はいぃっ」
「僕に話があるんじゃないの」
「…」
沢田は黙り込んでしまった。ここで嘘をついても良かったのだが、如何せん嘘は下手なので見破られるのがオチだ。
だから、仕方なく無言の『肯定』をした。
ただ、内容は言えるわけがない。
言ったら気持ち悪がられて咬み殺されるか最後までいう前に咬み殺されるかいう前に問答無用で咬み殺されるかどれをとっても未来は同じなのだ。(もう沢田は自分の命のカウントダウンを始めている)
「早くしてくれない?」
「…」
言えるわけ、ないじゃないですか。
黙っていると痺れを切らしたかのようにいきなりグイと襟首を掴まれた。
近い近い近い。只でさえ容姿端麗なのに思い人の顔が近かったら心臓が持たない。
少し癖毛な黒い髪の毛。黒曜石のように独特の輝きを持つ瞳。黒曜石の中に怯えている(ように見える)自分がいる。
思い人の目に自分が映っている。それほど嬉しいものはない。
だけど
絶対絶対聞こえている。心拍数がいつもの二倍はあるんじゃないかというくらい速い。
というかもしかしたらもう気付かれているかもしれない。
俺の気持ちに。
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