「ヒバリさんっヒバリさん、ヒバリさんっっ!!」
「煩いっ咬み殺すよ!」
ガバッ
「…夢か…」
(目覚めが悪いな…)
雲雀はふああと欠伸をして布団から出た。
顔を洗って、鏡で自分の顔を見ると、最近寝てないせいか、目の下に微かなくまができていた。
(あの子、のせいだ)
最近彼の夢ばかり見る。
見るのはいつも同じ夢だ。
彼がいつも僕の名前を呼んで近づいてくる。
そして、いつも何か言いたそうに彼が口を開くと同時に目が覚めてしまう。
(君は何が言いたいの。僕の睡眠を邪魔してまで何がしたいのさ)
雲雀は正直うんざりだった。
只でさえ、現実世界で自分の視界にいやというほど入ってくるのに、(そして、彼が群れていたら、その都度咬み殺す)夢にまで現れてほしくなかった。
勿論そんな状態でも、朝の風紀の仕事があるので、制服を着て、学校へ向かった。
(あの子を咬み殺さないと気がすまない、な)
すべて彼のせいだ。そして二度と夢に出ないでほしい。
そうこうしているうちに、雲雀は応接室に着いた。
しばらくすると、失礼しますとノックと共に草壁が入ってきた。
「委員長!」
「草壁か。いつものやっておいてくれた?」
「勿論です。あの…委員長…お疲れのようですから、休まれた方が…」
「別に疲れてない。ところで草壁、もし夢で実在する人物が毎日のように出てくるってどういうことかわかる?」
「それは、その人のことが好きなんではないでしょうか…」
好き…?
「そんなはずないっ!だってあの子は男だっ」
「委員長っ落ち着いて下さい!!」
好き…んな馬鹿な。
だってあの子は男―…
『でも、その話からはどうみても委員長が沢田に好意を持っているとしか思えません』
さっき、すべてを話した後の草壁の言葉が頭から離れない。
確かにあの草食動物には興味がある。
普段は咬み殺し甲斐がないほど弱いのに、突然強くなる。
どちらが本当の姿なのか、わからないから興味がわく。でも、それはあくまでも「興味」であって、「好意」ではないような気がする。
(絶対に違う)
いや、違うと思いたかったのかもしれない。
そんな中、時がすぎ、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
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