―好き。
ただそれだけなのに
どうしてそれだけじゃいけないんだろう―…
「つーっくん!遅刻するわよ」
「ふあぃ」
俺はフアアと欠伸を一つしてベッドからもそもそ起き上がった。
時計を見ると8時をとうに回っていた。
「今日も遅刻決定だな」
俺はいつものことながらため息をついた。
「つっ君元気ないわね。大丈夫?」
「うん」
母さんが心配気に俺の顔を覗き込む。
「じゃあ、いってきます」
遅刻しようが朝食は毎朝食べることにしている。(時々それが遅刻の原因だったりするのだが)
「気を付けてね」
母さんが玄関まで見送ってくれている。
俺は心配かけないように笑って手を振り返した。
母さんが見えなくなると俺は学生鞄をギュッと握って下を向く。通りすがる人達に今の俺の顔を見せたくないからだ。
多分、今の俺の顔は真っ青だろう。
(…眠れない)
ここ一週間まともに寝れたことがない。
寝ないんじゃなくて、寝れない。眠れない。
何でかはわからない。
母さんに内緒でこっそり睡眠薬も買ったが、最近それも効かない。
多分精神的なものだろうとシャマルに言われた。(彼はなんだかんだいって俺を診てくれているのだ)
何が。
何が俺を眠らせまいとしているんだ?
因みに眠くさえならない。だからここ一週間は睡眠時間は10分にも満たない筈だ。
勿論こんな状態で学校に行っても当然行く意味はなく、最近はサボりがちだ。
母さんには心配かけたくないから秘密にしている。
(今日も学校サボろうかな)
そうは思ったが、せっかく校門まで来てしまったので、授業には出ないが、屋上で時間を過ごそうと突然思った。
今思えば何故保健室ではなかったのかわからない。だけどこの時、急に屋上に行きたくなってしまったのだ。
こうして俺は屋上に向かうため、校門を潜った。
当然校門は閉まっていたが、遅刻常習犯な俺にとって校門はあってないようなものだった。
廊下は授業中のため静かだった。
俺は足音をなるべくたてないようにして階段をかけ上がり立入禁止の看板を乗り越えドアノブに手をかけた。
開けるときにギィ…と鈍い金属音がしたが、幸い誰も気付いていない。
「寝るには丁度いいかも」
ふふっと笑って俺は目を瞑った。
<end>
続きがあったはずなのですが間が空きすぎて忘れてしまったのでここで終わり。
[ 9/21 ]