言葉に出来ない
薄い唇が開かれて、言葉が紡がれる。
「ジョット」
そう呼ばれるのが、好きだ。
「アラウディ」
微かに笑って呼ばれた方を見れば、相変わらずの彼の姿。
「どうしたら手に入るのだろうな」
何が、とは言われなかったし聞かれなかった。お互いわかっているからこそ言葉に出来ない。
するりと首に腕が巻き付く。
「お腹、すいた」
「、そうか」
きっとこれから行われるであろう事を思い、彼を見つめる。
銀色の髪がさらりと風になびいている。
好きと言われたこともないし言うつもりもない。
ただ行為でちゃんと示しているつもりだ。
いい年した大人が、と笑われることも覚悟の上だ。
手に入らないなんて、嘘だ。
とうに自分は彼のものだ。死んでも言わないが。
大人だからこそ言えない言葉がある。だからこうやって隙間を埋めるように抱き合うのだ。
言葉だけでは足りない位の愛を載せて。

〈end〉

2011.03.28


二周年記念第三弾。
アンケートでアラジョをと言うのがあったので練習がてらに。
大人だからこそ素直にいえないでも相手からいってほしい、そんな駆け引きを繰り返す二人が好きです。
因みに同名の曲も大好きです。

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