冷たい彼に溺愛されたい5題
1.嫌いじゃないって言ってるんだけど。何度も言わせないでくれる?

今日も二人で下校する。いつからかこんな奇妙な毎日が日常になってしまった。
沢田にとっては願ってもみない事なのだが、彼はどうなのだろうかと不安になる。
「ヒバリさん」
雲雀は立ち止まって此方を見る。思わず喉を鳴らした。
「俺の事どう思ってますか」
ど真ん中直球で聞いてしまった。
彼は眉を潜めて歩き始めた。
「嫌いじゃないって言ってるんだけど。何度も言わせないでくれる?」
満足通りの言葉に満面の笑みを浮かべて沢田は彼の後ろ姿を追いかける。
それは彼にとっては最高の殺し文句。

2.僕を怒らせたいの? その勇気だけは褒めてあげるよ。

何だかんだで沢田の家まで来た。
このまま家の中に入ったら彼に明日まで会えなくなってしまう。それが惜しくて中々ドアノブに手をかけることが出来ないでいた。
「何やっているの」
早く入れと顎で促される。
「だって、何か勿体無くて」
雲雀は本日二回目の溜め息をついた。
「僕を怒らせたいの? その勇気だけは褒めてあげるよ。」
そう言うが否や沢田の手を引いて家の中へと放り込んだ。

3.いまさら謝ったって遅いよ。もともと許すつもりもないけどね。

家の中に放り込まれた沢田は仕方なく階段をあがって自分の部屋へと向かう。
彼の乱暴さには慣れたつもりだが、結構傷付く。
憂鬱な気分で部屋に入ると冷気が彼を包み込んだ。
窓が空いているらしい。
沢田はぶるりと震えると、窓を閉めるべく手を伸ばす。
その手は別のそれで阻まれた。
「っ何で」
その手の持ち主は窓を閉めるとようやく顔を上げた。
「せっかく待っていてあげたのに。いまさら謝ったって遅いよ。もともと許すつもりもないけどね。」
何の話ですか!そう抗議しようとして開いた口は彼によって言葉を紡ぐことなく塞がれてしまった。

4.何その驚いた顔。僕から逃げられると思ってたんだ。

一瞬何されたのかがわからず、間抜けな顔をしていたのだろう。実際は数秒であろうその時間が無駄に長く感じられた。
端正な顔が離れると少し馬鹿にしたような声がした。
「ずっとこうしたかったからした。君は違うの?」
「そんなことっ」
ないですという前にまたキスされた。
「何その驚いた顔。僕から逃げられると思ってたんだ。」
逃がしやしないよ。君はずっと僕のものだ。
不覚にもその言葉にときめいた自分はそうとうMだと沢田は思った。

5.君は黙ってそこにいればいいよ。何、文句あるの?

あれから何度もキスの雨が降り注ぎ、もう夢か現実かの区別がつかなくなった。
「言っておくけど、現実だから」どうやら口に出してしまっていたようで、彼が返答してくれた。
やっと解放されたが、これからどうすればいいのだろう。あまりの急展開に頭がついていかない。
「俺、これからどうすればいいんだろう」
「君は黙ってそこにいればいいよ。何、文句あるの?」
いえいえとんでもありませんと弁解する。
彼が嬉しそうなのは気のせいではない。沢田はそう思った。

〈end〉

2010.12.27


ヒバツナがくっつくまでの話が書きたかっただけです。
お題は確かに恋だったさんよりお借りしました。
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