03



どうにもならない沈黙を叩き割ったのは腕に巻いた通信機のコール音。
緊急の出動命令だった。


爆破テロ。
追い込まれての籠城だったらしいが、二進も三進も行かなくなった末の自爆らしい。
崩れた瓦礫から逃げ遅れた人々を救出して、ひたすらポイントを稼ぐ。
奇妙なくらいあの時の状況と酷似していて、何だか吐き気がした。

何だって完璧に熟してきた内の、たった一つの失敗。
嗚呼、気分が優れない。


「バニー!」


相棒が声を荒げたその直後に、天井の一部が落盤。彼と自分との間に物理的な隔たりが出来てしまった。


「虎徹さん。こちらは無傷なので先に戻ってください。」

「お前は!?」

「自力で何とかしますよ。能力が回復次第脱出して帰社します。」


スーツの通信機で虎徹と連絡を取り、先に戻るよう伝えると、一方的に通信を切った。
しかし何とかすると言っても、能力を使ったばかりで回復するにはまだ大分時間がある。
この状況では救助隊など待つだけ無駄。


「…どうしたものか」


能力無しの状態では瓦礫を除去しきれないと分かった途端に暇を持て余した。
人がいた所で如何と言う訳ではないが、人を捜して辺りを見回す。

崩れた天井。その瓦礫に押し潰された壁であったもの。倒壊したデスクや棚。
このフロアにいた社員は全員救出した筈ではあるが、直感的に誰かいるような気がした。


―――微動する影が一つ。




「…本当に偶然なのかを思わず疑いたくなりますね。ウェルディさん。」

「その声、…ブルックスさんですか!?」

「ええ、僕ですよ。バーナビー・ブルックスJrです。」

「き、奇遇ですね…。私も此処に用事がありまして…」

「…何か探し物でも?」


顔はこちらを向いているが、頻りに床を這っている手が気になって仕様がなかった。
指摘をすれば、ハッとして体が跳ねる。


「その…白杖が、見つからなくって…」

「はくじょう?」

「目の見えない人が持つ、歩くための道具です。」


彼女が持っていたあの簡素な杖を思い出した。
二度目に会った時、あれで何度も叩かれた覚えがある。そして彼女は必死になって電柱に謝っていた。


「貴女一人では大変でしょうし、手伝いますよ。」

「い、良いです!自分で、見つけますから…。ブルックスさんは逃げてください。」

「僕は逃げませんよ、一般人ではありませんから。貴女を放置しても周りから顰蹙を買うだけで、僕に利益はありませんし。」


ポカン、と呆ける彼女を置き去りにして、早足で距離を置く。


見えないと分かってはいる。しかし、彼女の目に映るのが堪らなく嫌だった。
この時は、まだ理由<コタエ>を出せていなかったんだと思う。


To Be Continued.
12/02/11
▽後書き
バニーが叩かれていた衝撃シーンは第1話を参照。
此処からどうなるのかは私でもよく分からなーい。



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