独りは、孤独は、もう嫌だ。
貴女も、きっと僕と同じ。
―――そうでしょう?
愛なんて、と思っていた時期もあった。
でも、今はそんな愚考、有り得ない。
「バーナビーさん。」
「…ぁ、はい。何ですか…?」
「もしかして休憩中だった?」
「ええ、まあ。でも構いませんよ、何ですか?」
「邪魔しちゃったみたいだし…良いよ、後でで。」
バーナビーが言葉を促し、リオが濁すやり取りが何度か続く。
それに彼が苛立ちを感じ始めた頃、計らったかのように彼女が距離を開ける行動をとった。
「言わないで逃げるなんて、許しませんよ。」
その行動を妨害しようとリオの腕を掴む。
力を込めれば眉間に皺が寄り、堪らず痛いと吐き出した。
その状態を維持したままに、バーナビーは再び言葉の続きを促す。
「…最近、元気が無いような気がしたから、どうしたのかなーって…」
「…それだけ、ですか?」
「うん、それだけ。」
「本当に?」
「ほんとにそれだけだってば。そんなに信じられないの?」
驚きやら疑いやら余計な感情が混ざり込んではいるが、嬉しかった。
自分の事を気にかけてくれることがただただ喜ばしかった。
「リオ、愛してます!」
「よしよし。バーナビーさん、可愛いなぁ」
まるで麻薬のような、陶酔感。
潰さない程度に力を加減しながらむぎゅ、と抱き付く。
甘い香水が、鼻腔を擽っては消えていく。
嗚呼、リオがいてこその平常だと、そう思わされているような。
「ねぇ、リオ。リオは、ずっと隣にいてくれますよね?」
「あ、いや…でも、ずっと一緒なんて無理なんじゃないかな…」
「どう、して…です?どうして一緒にはいれないと?」
「だって、必ずどちらかが先に死ぬから。それにね、どちらかが違う人を好きになったら…終わるから」
微笑む理由が分からなかった。
どちらかが先に死ぬのなら、その後を追うこともできる。いっそのこと同時に逝くことも可能だ。
しかし、後者は―――…。
まさか。まさか、貴女は…。
嫌な憶測は勢いを増して、嫌な方向へと一人歩きを始める。
既に、違う恋人がいたのだろうか。
―――いたからああいう言い方だったんだ。
あの時、突き詰めて訊くべきだっただろうか。
―――今ではもう間に合わない。
全ての疑問は確定に。結果、もたらした物は、病的に歪んだ精神<ココロ>。
「バーナビーさん…目が死んでる、けど」
「リオ、一つ訊きたいことがあるのですが、良いですか?」
「うん?良いけど、」
「他に恋人がいますね?」
彼女が微かに震えた。
疑問符をかざしながら言い切った台詞に言葉が詰まるのも、冷や汗を掻くのも、
全ては図星から来るものでしょう?
―――ねぇ、リオ。僕は貴女を…。
「…いる。から、別れてほしいって、言いに来たの。でも、今日のバーナビーさん、体調悪そうだから後に、しようと…」
「何だ。それなら早く言ってくれれば良かったのに」
「バーナビーさん、」
リオが顔を上げ、その目に僕を映した。
「リオ、これは愛だ。貴女の想う純粋な、ね」
「…でも、私は、バーナビーさんを好きになることできない、んむっ…」
拒絶する言葉が言葉が腹立たしく思い、その口を己のそれで塞ぐ。
呼吸を阻害されて両目いっぱいに涙を溜める彼女が酷く滑稽に見えた。
「…や、やだ…死にたくないっ。まだ死にたくなんか…!」
「大丈夫ですよ。そうなった時は僕も一緒に逝きますから」
「や、嫌…誰か…助けて―――」
脳が、急激に冷えていくのが手に取るよりも鮮明に感じる。
彼女の口から違う男の名前が出ただけで、こんな風になるものか。
「リオ…?」
ふと我に返ると、彼女が倒れていた。
死んでしまったのか、と慌てて揺さ振ってみれば、体全体を使って呼吸をし始める。
良かった。まだ、死んでない。
「ごめんなさい、リオ。苦しかったでしょう。でも、僕は貴女を殺す気なんて無いんです。」
だって、僕は貴女を…愛することしかできない。
だから、
「リオの世界を、僕に下さい。」
嗚呼、孤独から永久に解放される日が来るなんて!
END.
11/12/01
▽後書き
血みどろバニーも好きだけど、殺さずに監禁するバニーも好きです。
ていうかヤンデレ万歳。愛してるヤンデレ。
愛渦巻いてマース!ハーリケーン!\(^o^)/(待て
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