カナはリクオの正体を知っていて付き合ってる体です。





*****



お風呂からあがって部屋に戻ると、リクオくんが居た。
ベッドに腰掛けてのんきにテレビを観ていた。私の顔を見るなり「おう」と声を出して、さも当然の様な態度で腕組みをしている。
いくら二人の関係が深いものであっても、連絡も無しに女の子の部屋に勝手に上がり込むなんて最低だと思い、持っていたタオルをすまし顔に向かって投げつけてやった。コントロールは良好で、見事に顔面にヒット。だけど、あまり動じてないようで少し悔しい。

「何すんだよ」

「不法侵入です」

「あのなカナちゃん、俺は夜になると、」

「はいはいぬらりひょんでしょ、勝手に上がり込んで迷惑ばっかり掛ける妖怪でしょ、それが性分なんでしょ、知ってます」

「…なんでぇ、せっかく来たってのにご機嫌ななめか」

「だって、」

リクオくんが勝手過ぎるから。
いつもリクオくんの気持ちばかりが先行して、その割に私の気持ちが追い付かない。何でも一人で決めちゃって、無理して背負い込んで、心配したっていつの間にか終わってて。リクオくんが妖怪であることに驚く暇もなく、三代目とやらを襲名したとかしないとかで更に忙しくなっちゃって、ただでさえ難儀な世界であろうに、どんな危険な目に遭っているのかと、毎夜毎夜不安でたまらないっていうのに、一切状況を報告しないで気まぐれにふらっと来て。私の都合なんておかまいなしじゃない。急に会いに来るっていうサプライズで女の子が喜ぶとでも思った?残念、世の中そんなかわいい子ばかりじゃありません。ていうか、非常識だから。非常識にも程があるから。勝手に上がり込むとか犯罪だから。僕がカナちゃんをずっと守るよー、傍にいてくれー、とか言われて素直に嬉しかった私がバカみたいよ。全然実行してくれてないじゃない!私はリクオくんにとって一体何なの?

っていう思考をそのまま言いそうになってしまい、必死になって口を押さえつけた。
我慢したところで無意味なのはわかっているけど、どう言ったらいいかわからないから耐えている。

「…時間とか考えてよっ」

どうにか絞り出したけど、何だか消化不良の台詞。私が考え込んでいた時間も長かった所為か、リクオくんは黙っていた。ちょっと困惑したような、悲しそうな。
そんな顔させたいわけじゃないけど、少しはわかってほしい。

「…会いたくなかったってことか?」

リクオくんはそう言った。しゅんとした表情に、胸がすごく締め付けられる。
会いたくないわけないんだから。

「そんなんじゃないよ…」

会ったら文句のひとつやふたつ言ってやりたかったのに、悲しそうなリクオくんを見たら不満がどこかへ行ってしまった。

「来るならちゃんと連絡して」

「ごめん」

「もういいよ」

結局許してしまうので、惚れた自分は甘いと思う。それに加えて、私は夜のリクオくんには何だか弱い。
リクオくんのとなりに腰掛けて、じぃっと顔を見つめてみて、やっぱり好きだと実感しては、一人悶えてしまうのだ。

「なぁ、まだ怒ってる?」

「え?…どうかな〜」

「どうしたら許してもらえんだろな」

私の髪を触りながら、リクオくんは難しい顔をしていた。私の中で許すとか許さないとか、結構もうどうでもよくなってるけれど。

「今夜は一緒に居てくれるなら、それでいいよ」



***

どんなに怒っても、好きなものは好き。
カナちゃんは最初驚くけど徐々に受け入れてくれる、寛容な娘だと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。



20110123
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