とてもとても寒い冬の日だった。
僕は真っ白な息を吐いた。カナちゃんが「まっしろだ」って言って笑うと、カナちゃんも同じ様に真っ白な息を吐く。それはそれは綺麗で、赤くなった鼻先が目立って可愛く見えた。
「今日は寒いね」
僕は相槌を打って、自分の両手に息を吹き掛けて擦り合わせる。温かさはほんの僅かで、あまり効果はないけれど。
「リクオくん、手袋してないの?」
「あぁ、忘れちゃって」
こんなに寒いのにね、と笑うと、カナちゃんはポケットに入れていた手を出した。オレンジ色の手袋をしていた。
「それ暖かそうだね」
「片方貸してあげる」
「いいよ、大丈夫だから」
そう言い聞かせている間に、もう左手の手袋を外してしまっていた。強引に僕の手に被せてくるもんだから、カナちゃんの温もりを感じてしまうじゃないか。
モコモコしている手袋は相当暖かくて、カナちゃんの左手が心配になる。
「この手袋、暖かいでしょ?」
「うん、ありがとう。でもカナちゃんの手が冷たくなるよ」
「これくらい平気だよ」
「でも、」
「いいの」
そう呟いて、カナちゃんの左手が僕の右手を握った。
「こうするから、いらないの」
ぎゅっと握り締めた彼女の手が、とても愛しくて、僕は寒さなんか忘れてしまうくらいだった。
お互い見合って、ちょっと笑って。気遣いと照れが入り交じってマーブル模様。
「カナちゃん」
「なあに?」
「もうちょっと暖かくしてあげるよ」
そう言って僕は、ふっくらした薄桃色の唇にキスをした。
***
好きな子と居れば、無色な真冬も色とりどりの世界になると思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
20110123
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