キリ番を踏まれた、サクラノミヤビ様へ!リクエスト頂きましたゆうま×しょうすけです!
「ゆうまくん」
放課後。
学校のニワトリ小屋を見ていると、後ろから声がした。しょうすけの声だ。
「岡崎か」
「わ、当たり!よく分かったね!」
「…たりめぇじゃん。その…うざい感じ、お前しかいねーよ。」
「そ、そっか…;ねぇ、僕も横、いいかな?」
「!…勝手にしろよ。」
つっけんどんにそう言うと、しょうすけは喜々として横に座った。
「いつも、見てるよね。」
二人でニワトリを見ていると唐突に、しょうすけは話し出した。
「な…なんだよいきなり」
「え?あ…んと、ゆうまくんいつも放課後、此処にきてるから…」
毎日見られていた。そのことが何となく、気恥ずかしくなった。
「ストーカーかよ…気持ち悪ぃな」
気持ち悪いと思ってもないくせに、照れ隠しにそんな事を言ってしまった。
「ご、ごめんね…;」
悲しそうなしょうすけの顔が、胸に突き刺さる。でもそんなの、普段からいじめてしまってる俺にとってはもう、今更な痛みだった。
もう、心も麻痺してしまっているのかもしれない。
「お前…」
「え?」
そういえば、なんでコイツは放課後まで学校にいるんだ?
ふと、俺は疑問に思った。
「どうして…?…」
しょうすけは口をつぐんだ。
「…。えっと、ね…田中先生に…」
「田中?体育の?」
「う、うん…あ、あのねゆうまくん、僕…」
「岡崎!」
しょうすけが何かを言おうとしたとき、怒鳴り声がした。振り向くと、田中がイライラしながら立っていた。
「何をボーッとしているんだ!早く来い!」
「は、はい…っ」
返事をするしょうすけの顔は、怯えきったように見えた。
…嫌な予感がした。
まさか、
まさか……
「行くぞ!!」
刹那。
俺はしょうすけの腕を掴んで、急いで学校から逃げていった。しょうすけが痛いと言うのも構わず、ずっとずっと…
気がついたら、公園まで走っていた。
走ってきた方を見る。田中の姿は見えなかった。
「ハァ、ハァ…田中は来てねぇみてーだな…」
「はぁ、はぁ、はぁ…」
しょうすけは肩で息をして、ぐったりしていた。
「平気か?」
「う、うん…。でもどうしたの…突然…?」
「……。」
「お前…田中の事、苦手そうだったから…。」
「…! ぼくのために、走ってくれたの?」
俺はこくんと、頷いた。
…と、
「ありがとう、ゆうまくん…」
しょうすけは、ぎゅっと俺に抱き着いてきた。
俺はいきなりのことに動揺したが、不思議と離そうという気にはならなかった。
しょうすけの柔らかい髪から、良い香りがする。
「な、何してんだよ…」
「ご、ごめん…」
「…別に、良いけどよ…。」
本人に気づかれないくらい、ほんの少しだけど
その時初めて、しょうすけへの気持ちに、素直になった。
夕焼けのチャイムが鳴った。
「…あ。お前、もう帰らねーと。」
「え?」
「もう夕焼けのチャイム鳴ったぞ。」
「ほ、ほんと…!?」
途端にしょうすけは慌てだした。まさか、抱き着いてる間ずーっと時間を忘れてたのか…?
「そ、それじゃ、帰るね!」
「ああ。」
「今日は…その、ありがと///」
「…なんてことねぇよ。」
「う、うん///それじゃあ!」
しょうすけはタッと駆け出した。
「…岡崎!」
「?」
「お前をいじめていいのは、俺だけだから。他の奴らにいじめられたら、俺に言えよ!?」
自分で叫んでおきながら、意味不明な言葉だと思った。
「…うん!」
でも、しょうすけは満面の笑顔で、そう答えてくれた。
しょうすけの姿が、地面に伸びた影が見えなくなるまで、俺は見送った。
「…馬鹿みてぇだな、俺」
しょうすけをいじめておきながら、しょうすけを守りたいだなんて。
「いつになったら…素直になれんのかな…。」
そんなことを考えながら、俺はずっと、夕焼け雲を見つめていた。
fin
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