DRAMATIC IRONY_04 | ナノ
04
「何だ、真っ白だな」
その教室は騒然とした。今日から新しく同じ教室で学ぶ仲間がどんな人物であろうかと楽しみにしていた生徒の一人が彼が教室に入ってくるや否や思わず漏らしたその言葉がきっかけだった。転入生を見てざわめきが強くなった教室は狂気じみた空気を孕み、この空間が閉鎖的なものであることを強調した。それは必ずしも非難ではなかったが彼の髪と傷は通常の学生生活を営む者には些か刺激が強い。大衆は彼に注目しているのではなく各々の想像の中の彼に注目した。しかし熱を持つ大衆とは対照的に彼はこの場にいた誰よりも冷静だった。なぜなら彼にとってこの状況は珍しいことでは決してない。彼はもう15年も生きている。
「皆さん初めまして。アレン・ウォーカーです。中途半端な時期に来てしまいまいみなさんも困惑していることと思いますが、僕はこれから皆さんと一緒に楽しく学んでいけたらいいなと思います」
軽やかな口調だが礼儀正しく、空間全体に向かって丁寧に。
「どうぞよろしく」
その笑顔に教室の空気は一変し、重い空気は和みだす。純粋な人間はあくまで自分は正義でありたいと願うのだから、歩み寄るものには親切であろうとする。彼はそれを知っていた。指示した席に着いた白い少年はもう早速隣の席の少年少女達に話しかけられている。リンクは事務的な連絡のみを告げて教室から去って行った。
鐘の音を真似た電子音が本日授業の終わりを告げた。
授業の終わりの挨拶が済むと物理担当であるコムイ・リーはアレンの机に近寄ってきて彼の前に紙を差し出す。
「この書類、書いたら担任の先生に出してね」
この人はこれでいて校長である。本来校長という彼が教壇に立つのはアレンにとって不思議な光景である。
「どうだい、この学校には馴染めそうかい?」
その言葉はただの責任からの言葉だが不思議な温かみがあった。アレンは彼を嫌いではない。
「とっても楽しいです。勉強のほうはまだついていけるかどうか不安ですが」
ついプリントや授業道具をしまう手を止め苦笑を浮かべる。コムイの表情が緩む。
「分からないことや心配事があったらいつだって聞きに来ていいからね」
手を振りながら去っていく校長の背中を見送り、アレンは次の授業のテキストを出すと教室を出て行った。
なかなか話が動かなくて済みません。ティーンズ全員と接触したらもう少し早くなると思います。早くシェリル兄さん出したいし。