「大丈夫ですか?」

いつの間にか気を失っていたらしい。快楽に染まった身体はそれでもさっきよりずいぶんとマシで、私はこくりと頷く。勇者は自力で拘束を解いたらしく、申し訳なくなって謝る。

「こうなるから、来て欲しくなかったんだ」
「でも、ひとりだと大変でしょう」
「あんな醜態を晒すよりは、マシだ」
「僕はもう見てしまったんですから、いつでも呼んで下さい」

どこまでもお人好しな笑顔で言う勇者に、少し悔しくなる。こっちは、理性がなくなるくらい、おかしくなるくらい求めさせられて狂わされているのに。

「お礼を、させてくれないか?」

にや、と笑うと、きょとんとした勇者は、意味がわかったのか真っ赤になって慌てる。

「私じゃ不服かな?」

濡れた瞳で見上げると、それにあてられたらしい勇者がごくりと唾を飲む。

「そんなことは、ないですけど」
「なら」

君のいいようにしてくれ。
引き寄せて耳元で囁くと、理性が切れたらしい勇者にそのまま押し倒された。



「ひゃ、ら、も、だめ」

目隠しをして四つん這いにさせられて、ずっと中をいじられている。
視覚が遮断されているからか、いやらしい水音がやけに響いて聞こえる。

「ほんっ、と、たまらないです。ずっと、憧れてたあなたが、俺の指でこんなに乱れてるなんて」

奥を刺激されて、何度目かわからない絶頂を迎える。いたずらに尻尾を触ったり舐められてはそのたびに痙攣して、薄くなった精液を漏らす。

「も、ゆるして、いれ、て」

尻尾を揺らして、ねだるように腰を振る。

「僕のいいように、していいんでしょう?」

つつっと尻尾を指先で撫でられて、びくんと痙攣する。

「いれたく、ない、のか?」
「入れたいです、けど、もっと乱れるあなたが見たい」

じわじわいたぶるような愛撫がもどかしい。
勇者がどんな顔をしているのかも見えなくて、不安が煽られる。

「せめて、かお、みせて」

そう言うと、身体を裏返しにされる。
向かい合うような格好になったらしい。するりと抜き取られた目隠し。眩しくて細めた目に入ってきたのは、予想以上に興奮した勇者で、それに益々気持ちが昂ぶった。

「いれますよ」

身体を包む体温。それより熱いものに、中を犯される。熱くて、気持ちいい。

「魔王、も、だめです。」
「わたし、も、いくっ」

突き上げてくる動きは、自分が動いていたときと比べものにならないくらい気持ちいい。
中に広がる熱さに、もうほとんどでなくなった精液がとろ、と垂れる。

「気持ち、よかったです」
「あぁ、私も……だ」

思い切り抱きしめられる熱さは不慣れなもので、それでも心地よくて、しばらくつながったままその体温に身を任せる。



「ところで魔王、今全身性感帯なんですよね」

身綺麗に整えられ寝かし直された私に、勇者は思いついたように言う。

「ん? あぁ、まあそうなるな」
「それにしては随分普通に話してますけど」
「慣れのようなものだな」

実際、出してマシになったものの、まだじんわりと快感は残っている。ただ、これが初めてというわけでもないから耐えられるというだけの話だ。

「それってつまり、キスだけでイったり、胸だけでおかしくなったりさせることも可能だったということですか」

真面目な口調に一瞬真剣に受け取り、意味が理解できない。

「……そう、なるな」

なんとか絞り出すように答えると、あいも変わらず真面目な顔の勇者は、ぽつりと一言、聞き捨てならない言葉を漏らす。

「あと、二日か……」

今回のこれは乗り切れるのだろうか。
疼く身体も勇者の視線も気にならないことにして、無理やり眠ってしまうことにする。
起きるのが怖いが、それは考えない。


(終)