側に居て欲しい



……………あれ?




なんでオレ……




泣いてんの…?




…………あぁ…


そっかァ……




また「あの夢」を見ちまったのか……。









オレは不死になる前、ジャシン教の実験として何度も人体実験を行なっていた。



いや、人体実験「されていた」って言う方が正しいかもな。





正直それは……



普通の人間には想像もつかないくらいの痛みと苦しみを味わうもんだった。




まぁ、そりゃそうだよな…

それを長期間、ほぼ毎日されてたわけだし……。



オレだって何回死にそうになったか、死にたくなったかさっぱりわかんねェ…。




監禁された檻の中。



オレは毎日、実験中に死んで運ばれて来る無惨な死体を見てた。



それを見て、自分もいつかはあんな風に死ぬのかもなァって、本心そう思ってたもんだから…


死への恐怖心なんてもんは特別オレにはなかった。



そしてまた実験され続ける。 


そして何度も実験を繰り返すうちに身体に染みついていった、ひたすら「逝き」続けるあの感覚……


アレが不死のなりかけって言うのかはわからねーけど…生死の狭間をさ迷ってたことには変わりないな。



その感覚に、オレだけが命を保てた。



そしてオレが、オレだけが不死になることができた。


  
実験してた奴らは奇跡だなんだってスゲー騒いでたぜ…。




その時にあぁオレが選ばれたんだ、オレだけが見初められたんだ、って一層強くジャシン様を慕った。



そして、めでたく不死になれたオレは、実験所のやつら全員諸共皆殺しにして里を抜けた。


  
別に実験所のやつらを恨んでたわけじゃねーけど…


殺して欲しそうに見えたんだ。




一応、ジャシン様に見初められた人間が目の前に誕生したわけだし…


実験されてるやつはやつで苦しいから楽にして欲しいって、オレもその苦しみをよく分かっていたから…



結局、全員文句どころか逆に嬉しそうに死んでいった。





…………ただ、それからが辛かった…。




不死として戒律を守る日々を過ごしていくうちに、何かを背負うような苦しさを覚えてきた。




多分それは…




自分の隣に誰もいないって気づき始めたからだと思う。



「汝、隣人を殺戮せよ」



不死のオレは隣に誰も居てはいけない。




友人だって恋人だって。



作る前に殺さなくちゃいけねェ…。




不死のオレは一生孤独で生きていかなきゃいけねーんだって、今更そんなことに気づいちまった。




実験所に居たときはそんなこと考えたことなかったのに…



本当に……今更だ。





そもそもオレにはジャシン様という素晴らしい存在がいるのに……




でも、本当は一緒に生きてくれる相手が欲しくて…

寂しくて……




寂しくてたまらなかった…。








そんなある日…… 

オレはあいつに出会ったんだ。





そう、これからオレが一生一緒に生きていくって決めた「あいつ」。






「飛段……」






名前を呼んで抱きしめてくれる「こいつ」。






あぁ…






不死になって本当によかった……。






側に居てくれるだけで嬉しいのに、抱きしめてくれるなんて幸せすぎて逆に涙が止まらなくなる…。





だってお前スゲーもん…。



お前と一緒に生きるためならどんな苦しみだって乗り越えられる気がするんだ…ホントに。





なぁ……



泣いてんのはお前のせいだって分かってるのか…?



こんなにオレの頭ん中めちゃくちゃにして……





もういっそこのまま死んでしまいたい…。





本当に愛してる…





本当に……








「ありがと…角都ゥー」




(出会ってくれてありがとう)

  


オレはお前に出会うために生まれたのかもしれない。



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