既に過ぎ去りて



赤茶けた荒野を一人、アンドロイドは横切っていきます。
何も言わずにただひたすら歩いていきます。
時折周りを見回してはまた歩き始めます。

アンドロイドの脳裏にあるのは…
大地には緑が生い茂り、動物達が生を謳歌し、青い空に真っ白な雲と燃える太陽、遥か彼方まで広がる海の漣の音がささやかに眠りを誘います。
家々が建ち並ぶ街には人が往来し、威勢のいい店主の声や、子供たちの笑い声が響いています。

その中で微笑む人―


赤茶けた荒野を一人、アンドロイドが横切っていきます。
何も言わずにただひたすら歩いていきます。
時折周りを見回してはまた歩き始めます。
そんなアンドロイドを容赦なく砂煙が飲み込みますが、全く意に介すことなくアンドロイドは歩を進めます。
風化した瓦礫に見向きもせず、記録に残っている風景を探し続けます。


悲しきかな、アンドロイドは時間の流れを体感出来ない。
アンドロイドの中で変化したものは初めから別物なのだ。
君の探し求める世界は遠い昔のこと、君が機能を停止している間に海なんて消え失せましたよ!!

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